先生と地球3 ページ28
そこからは一方的な殺戮だった。
｢私が行くしか……｣
｢あの戦場は結晶石の弾丸が飛び交ってます！先生を行かせるわけにはいきません！｣
｢しかし彼らの命はひとつしか｣
その時、星海坊主さんが虚に大砲を向けているのが見えた。
｢先生伏せて！｣
神威さんに腕を掴まれて動けない虚に、とびきりの弾丸が撃ち込まれた。
そこに残ったのは、虚の腕1本だけだった。
｢その腕を消してください！｣
先生が叫んだ。虚は腕1本からでも再生することを知っていたからだった。
｢いや違……星海坊主さん！｣
逃げてと先生が叫んだが遅かった。大砲を撃とうと構えた星海坊主さんの腕に虚の刀が刺さっていた。大砲は暴発し、辺り一体が砂煙に包まれた。
｢やはり私を殺せるのは私しかいないようだ｣
神楽ちゃんと神威さんが虚の方へ飛び出した。
でも僕の身体は動かなかった。魂が、身体が、
｢それでいい。あなた達にできることはその剣を捨て、
虚の剣が、目の前に迫っていて、僕は目を閉じることしかできなかった。
走馬灯のように、父の姿が、言葉が蘇ってきた。
僕はそれを、死の前の走馬灯にはしなかった。終わらないもののため、変わらないもののために、そこで生きることを決意した。
僕の剣は、虚に届いた。
｢新八くん！｣
僕と先生の剣が、確実に虚を追い詰めていると信じて疑わなかった。しかし攻勢も長くは続かなかった。
｢いい一太刀でしたよ、最初のだけは｣
痛みを覚悟した直後、乾いた音を立てて、虚の剣が地に落ちた。
そして虚が吐血した。僕は反射的に先生を見た。先生は平気そうだったが、少し苦しそうに眉をひそめた。
先生はそもそもアルタナの力を湯水のように使っていたわけではなかったので、この星から溢れるアルタナの量からは影響をそんなに受けないようだった。
虚の再生能力が、著しく低下した。定春が、龍脈を鎮めたのであった。
状況は一気に逆転した。しかし虚も、まだ終わってなどいなかった。彼の体内に、まだアルタナが残っていたからだ。
しかしそれもすぐに変化が起きた。虚は視線を先生に向けた。先生は地球からのアルタナの補給がなくなって多少苦しそうではあったが動きは変わっていなかった。虚は同じ身体を持つ自分と先生を見比べているらしかった。
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作者名：風寧 | 作成日時：2019年10月13日 2時
