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『……太宰さん、通信の準備、出来ました』


「ありがとう。では始めようか」





太宰さんはスイッチをカチ、と押した





「やあ、鏡花ちゃん、聞こえるかい?…太宰だ。横には香里ちゃんもいる。さて、特務課と交渉してね、取り敢えず君を地上に降ろせる事になった。」



返答は無い。繋がっている筈だけど……



「その無人機の操縦方法を教えるよ。先ずその操作盤で__」

《「いい。」》


『「!」』


《「もういい。もう私は何も……」》


「……そうかい、判った。」




『……本当の事を云うとね、鏡花ちゃん。探偵社には貴女を救ける理由はないの。何故なら貴女は未だ社員ではないから。探偵社の調査員には入社試験があって貴女は未だそれを通過(パス)していない。
その試験は探偵社員として、見知らぬ人でも助ける心と強さを持っているかを(ため)す試験。それを通過して初めて探偵社員となる。』



《「……私には、きっとその試験は……」》





鏡花ちゃんは初仕事なんかのことを思い出したのか自信が無さそうだ




「気に入らないな。……“元殺し屋に善人になる資格はない”………君は本気でそう思っているのか?」





太宰さんは知り合いがそうだったのか、何かを思い出すような澱んだ眼で云う





「鏡花ちゃん、人には向き不向きがあり、君には明らかな殺しの才能がある。だから君は探偵社員にはなれない。君はそう思っている。…………全く莫迦々々しい。
その考えが如何に根拠薄弱か一秒で証明して見せよう。鏡花ちゃん、君はその手で何人殺した?」



《「………35人。」》



「たかが35人くらい何だ?」




『!?』




太宰さんは自虐する様な目でそう云う





「いいかい鏡花ちゃん。君は探偵社の凡てを知らない。自分自身の凡ても知らない。凡てを知ることは誰にも出来ない。それを“可能性”と云うんだ。
君に契機(チャンス)をくれた敦君だって、元は災害指定猛獣だ。でも彼は今、その近くの空域で命を懸けて戦っている。街を守る為にね。」



私は昨日の事のような虎騒ぎを思い出す。あれからすぐ列車の爆弾騒ぎに晶子さんと3人で巻き込まれたんだっけ……



若し今日この荷物を降ろして善いのなら→←最後の大君



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作者名:ペネロッペ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Mayakaahah/  
作成日時:2022年10月5日 11時

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