72輪目 ページ26
突然言いよどんだ彼を不思議に思っていると、
「…桃井、即刻出て行くのだよ。」
「えぇ!?なんで!?」
深刻そうに告げる彼に疑問を抱くさつきちゃん。
「思い出したのだよ。今日の運勢、かに座と相性が悪いのは牡牛座。関わると面倒なことになるとあったのだよ!」
「それって私の運勢じゃなくてミドリンの運勢じゃない!?」
「そうだ。だから桃井…出て行くのだよ。」
有無を言わせない様子の彼。こうなったら彼は絶対に譲らないだろう。
「仕方ないね。出ようかって、わっ!?」
さつきちゃんと一緒に出ようとするが、真ちゃんに腕を引かれる。急だったので、バランスを崩して彼に寄りかかってしまう。
「今日の運勢、かに座と相性が良いのは牡羊座なのだよ。だからお前はここに居ろ。」
「っ、ごめんね、さつきちゃん。スタンプラリー、頑張ってね。」
密着した姿勢に意識が向かないようにして彼女に声をかける。
「う、うん!絶対、テツくんと優勝してくるね!」
そう言ってさつきちゃんは去って行った。
思わず息を吐くと、
「ミケ?」と真ちゃんが不思議そうに尋ねる。そこで、彼に寄りかかったままだと気付く。
「ご、ごめんね。今、どくからっ…わっ!?」
「ミケっ!?」
慌てて彼から離れようとするが、こんな時に限って足がもつれて倒れてしまう。床にぶつかる衝撃を覚悟して目を閉じると、いつまで経ってもその衝撃が来ないことに気付く。不思議に思って目を開けると、真ちゃんの顔がすぐそこにあった。どうやら抱きとめてくれていたらしい。
「怪我は無いか?」
背中に回された腕に、密着した体。どこか心配そうに寄せられた顔。意識した途端に体が熱を熱を孕むのを感じた。恥ずかしくて、もっと見つめてほしくて、見つめないでほしくて、頭がぐるぐるして思わず目に涙が溜まる。顔はきっと真っ赤だろう。思わず顔を手で覆った。
「ミケ?」
「だ、大丈夫。真ちゃんは?」
「俺は平気なのだよ。おい、顔を見せろ。」
「や、やだっ。」思わず抵抗する。
「なっ、まさか顔に怪我でも…。いいから見せるのだよ。」
無理やり手をどかされて顔を見られてしまう。きっと私は変な表情をしているだろう。顔は熱いし、涙も溜まっている。
「み、見ないで…。」
「っ!…顔に怪我はないようだな。落ち着くまで俺は目を瞑っておくのだよ。」
そう言って私から離れて目を瞑る彼。その優しさにまた胸が締め付けられる。
離れた熱が恋しいような気がした。
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作者名:みぃ太郎 | 作成日時:2023年7月25日 21時