閑話三 ページ43
〜Aが起きる前(続き)〜
「逃げる？」
何から？ 何故？
中也の思考なんて単純なもので、一度だって外した事はない。
其れなのに。
中也が何を云いたいのか分からない。理解出来ない。
「無自覚か？ 手前、自分の気持ちに逃げてるだけだろ」
「自分の気持ち？ 私の気持ちはが中也には分かるとでも云いたげだね。
云ってご覧よ。私の本心は、どんなのだい？」
握った拳が震えていた。
中也に私の本心を言い当てられる？ 真逆。
しかし……。
「手前、Aの主人は自分だと思ってるだろ。
俺なんかにゃ務まんねェ、自分こそが、Aを支配するのに相応しいってな」
「……」
「そもそも手前はAに執着し過ぎてた。
可笑しいだろ、態々プライベートまで口出しし
て、今迄の手前じゃ考えられねェ話しだ。
女なんて面倒だって云ってた手前じゃな」
中也はそこで一旦言葉を切り、私の目をじっと見つめた。
光を帯びた綺麗な青の瞳が私を刺す。
「……別にいいぜ。手前の気持ちなんか知ったこっちゃねェ。
だがンなしけた面下げて俺やAの前に現れんのはやめろ。
手前のしけた面なんざ気味悪いにも程がある。
……精々手前で手前の気持ちに落とし前つけとけや。
其れがどんな答えだって俺も、多分Aも何も云わねェよ。
相棒として、部下として、受け入れる。そんだけだ」
それだけ云って中也は私の返事も聞かず医務室から出て行った。
……真逆中也にあんな事を云われる何て。
しかも其れがぴったりと合うなんて、信じられない。
妙なとこだけ勘が良くてむかつくよ、全く。
しかもあんな決め台詞まで残して。いいかっこしいなのがバレバレだし。
でも、自分の気持ちに自分で落とし前つけなきゃいけないって云うのは本当だ。
私はAを欲しい。此れは、破壊欲のふりをした独占欲だったんだ。
ねえ、私が君を一目見て欲したように、君も運命を感じてくれた？
答えが欲しくて、でも当然Aは答えてくれなくて。其れに答えを聞くのも怖い気がした。
結局私は、Aが起きるまで、なんて期限を付けて自分の気持ちから逃げ、
落ち着かない心を愛読書で落ち着けようと頭に入りもしない活字を目で追っていた。
「あ、の……」
か細い君の声を聞いた時、胸が締め付けられるような心持ちだったことなんて、君は知るよしもないのだろう。
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れい - 続き、楽しみにしています(*´∇｀*)/ (2017年8月3日 12時) (
レス) id: ea54add459 (このIDを非表示/違反報告)
徒長(プロフ) - れいさん» ありがとうございます！ (2017年8月3日 11時) (レス) id: f4aa93743b (このIDを非表示/違反報告)
れい - 読み方はボスですよ。 (2017年8月3日 11時) (レス) id: ea54add459 (このIDを非表示/違反報告)
徒長(プロフ) - ありがとうございます。読み方はしゅりょう、ですか？ぼすですか？ (2017年8月3日 11時) (レス) id: f4aa93743b (このIDを非表示/違反報告)
れい - 黒の時代での森さんへの呼び方は首領、探偵社入社後は森さんですよ。 (2017年8月3日 10時) (レス) id: ea54add459 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：徒長 | 作成日時：2017年8月1日 12時
