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鎖が36本 ページ36

其の後の事は余り覚えていない。
ただ体が燃えるように熱くて、其のくせ頭は絶対零度の冷たさで、体から力が湧き上がってくるのを感じていた。


気づいた時、私は医務室の寝台の上で寝かされていて、体が岩のように重かった。
無理をして寝返りを打つと、カーテンの奥に人影が見えた。長身、蓬髪、若干猫背、手には少し小さめの本。太宰さんだ。

「……あ、の」

正直声を出すのも億劫だったが、其れよりも聞きたいことがある。
太宰さんはすぐに本を置いてカーテンを開け、私の手を握った。

「やあ、起きたんだね。調子はどうだい?」
「まあまあ、です……。私、どうしたんですか?」
「……」

太宰さんは複雑そうな顔で私の髪を撫でた。
今迄で一番優しい手だったと思う。

「何か、あったんですか?」
「……ないよ、何も。ただ君は自分が組織にとって素晴らしく優秀な人材だと証明しただけさ」

太宰さんにしては歯切れの悪い云い方だった。
何か云いたいような、云いたくないような。
そんな躊躇いが感じられた。

「じゃあ、任務は成功、したんですね?」
「そうだね。大成功だ。
君はあの後組織のボスを殺し一瞬で中也の所に飛んだ。壁をぶっ壊して中也を救出し、敵を完膚なきまでに叩き潰し、拷問用の人間も残してくれた。万々歳じゃないか」

何時もの戯けた口調で、其のくせどこか拗ねている。今日の太宰さんはとても子供っぽい。

「……なら、何がご不満なのですか」

私だって苦しいのに会話しているのだ。其処まで優しくはしてあげられない。

太宰さんは私を見て心底驚いたような顔をして云った。

「不満? 何を云っているんだい? 任務は大成功、君も無事、これ以上にいい事はないじゃないか!
ああ、敢えて云うなら私がまだ生きている事が不満、だけれど……それは何時もの事だしね」
「……」
「君も目覚めた事だし、首領を呼んでくるよ。余計なことを考えずに大人しくしていたまえ」
「……逃げるんですか」

出せる目一杯の声で、医務室から出ようとする太宰さんに呼び止めた。
太宰さんが扉の前でぴたりと止まる。

「逃げるんですか、そうやって。答えを誤魔化して、意味深に笑って。
本当は貴方にだって答えがわかってないんじゃないですか?
だから、だからそうやって逃げて、逃げて、誤魔化すんじゃないですか」

ゆっくりと振り向いた太宰さんの顔は苦しいくらいに歪んでいた。

「……そうだったら、どれだけよかったろうね」

其の声は少しだけ掠れていた。

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れい - 続き、楽しみにしています(*´∇`*)/ (2017年8月3日 12時) (レス) id: ea54add459 (このIDを非表示/違反報告)
徒長(プロフ) - れいさん» ありがとうございます! (2017年8月3日 11時) (レス) id: f4aa93743b (このIDを非表示/違反報告)
れい - 読み方はボスですよ。 (2017年8月3日 11時) (レス) id: ea54add459 (このIDを非表示/違反報告)
徒長(プロフ) - ありがとうございます。読み方はしゅりょう、ですか?ぼすですか? (2017年8月3日 11時) (レス) id: f4aa93743b (このIDを非表示/違反報告)
れい - 黒の時代での森さんへの呼び方は首領、探偵社入社後は森さんですよ。 (2017年8月3日 10時) (レス) id: ea54add459 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:徒長 | 作成日時:2017年8月1日 12時

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