41 ページ41
思考が曖昧になる。ゆるりと拳銃を持った手を上げる。
黒髪の人の心臓を狙う。
「おい、A…」
震える声で私の名前を呼ぶその人。
「いいよ、そのまま撃って。」
私の背後に立ち、耳元で囁く茜。その言葉に素直に従う。
「やめろ!!!A!!!!」
黒髪の人に鎖を解いてもらった金髪の人が叫ぶ。
「近寄るなよ…A、早く撃って。」
『うん…』
「A…銃を下ろせ。」
「A!!しっかりしろ!!!A!!!」
「ほら、早く撃てよ!!!A…Aお姉ちゃん!!!」
頭では分かっているのに、体が上手く動かない。
あれ…私は何をしている?
ちか、とフラッシュのように視界が瞬く。
私はぐるんと体を捻り、発砲する。
パン!
「うああぁぁぁ!!!!」
『っ…!!』
叫び声。私はきちんと構えていなかったのか、発砲の反動で飛ばされる。飛ばされた先で私を受け止めてくれる人。
「…A…」
『…零。』
零の肩からは血がどくどくと溢れている。
「っなんで…!?おい、A!!!Aお姉ちゃん!!!」
倒れこんだ人が私の名前を何度も呼ぶ。彼は玲さんに押さえつけられる。
ずきんずきんと頭が痛む。
『っ何…貴方は誰…!?』
私は頭を押さえる。痛みは名前を呼ばれる度に酷くなる。
「…どうして…?さっき思い出してくれたじゃん…」
その人は目に涙を浮かべる。
その顔を何度も見たことがあるような気がする。
けれど靄がかかったようにはっきりしない。
『貴方は…一体…!!』
頭が割れそうだ。痛みで意識が薄れていく。
「A、大丈夫だ。」
ふわりと抱き締められる。視界はスーツに覆われて暗くなる。
『零…』
「大丈夫だ。」
より強く抱き締めてくれる零。
その厚い胸で私の目を塞ぎ、たくましい腕で耳を塞ぐ。
『れい…』
私は怯えるように零の背中に手を回して縋る。
「A…ねぇ、A…」
遠くから聞こえる声。ついさっきまでその声の主を分かっていたような気がする。
「A…ぼくをたすけてよ…」
「A、もう大丈夫だよ。」
ゆるりと零の腕から解放される。声がした方を見る。
『玲さん。』
「…さっきの少年について知っていることを教えてくれる?」
玲さんは私に近づいてきて頬にそっと触れる。
『…少年?何の話ですか?』
「「え…」」
『それより零!早く手当てしないと…!』
82人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
泉 - 久しぶりに来たら続きが更新されててうれしい🎵⤴️ (8月22日 15時) (レス) @page50 id: 5bd30ec6cb (このIDを非表示/違反報告)
微睡(プロフ) - 泉さん» ありがとうございます!ゆるりと更新していくので読んでやってください! (8月5日 10時) (レス) id: abcbb5d66a (このIDを非表示/違反報告)
泉 - 1ページの文字数が少なくて読みやすいです! 更新頑張って下さい! (8月4日 7時) (レス) @page6 id: 5bd30ec6cb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:微睡 | 作成日時:2023年7月31日 18時