花吐き少女と記憶喪失少年

0 1 5 不審者 ページ16

ぎぃ と虚しくブランコが揺れるなか、私は1人で公園に来ていた。
部活が終わってから徹のお見舞いに行ったので、今はもう夜に近くなっていた。
いつもだったら、徹と話しながら岩ちゃんを待つはずだったのに…なぁ。


はぁ とため息を吐いて、自分の手のひらをみる。
じんじん していたのも、ようやく治まってきて。少しだけ、安心してしまった。
…徹の手を払ったことに、変わりはないのに



「…徹、呆れちゃったかなぁ」


1人でブランコに力なく座りながら、もんもん嫌な考えごとをする。
あぁ、やだなぁ。ほんといやだ。
自分がこんなにも弱いことが、情けなくてむしずがはしる。


涙が溢れそうになって、慌てて上を見ると。
こっちをじー と見る人と目が合ってしまった。
…なに。不審者？え、うそ…待って
止まってよ、ねぇ なんて思っても、不審者さんはどんどん 私に近付いてくる。



「や…と、おる」


足が凍りついたように動かなくて、やっと動かせたと思ったら、動いたのは指だけ。
20mぐらいあった距離がどんどん縮まって行って。
私が身構えたときだった。



「A…先輩？」
「え」


不意に、不審者さんが私の名前を呼んだからだ。
その声は、私の後輩にそっくりで＿＿＿









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