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不器用だけど ページ35

置いて行く側は自分の事で何度も涙を流さないでほしいと思うし幸せに生きて欲しいと願う。

正、文…ごめんね。
何日も涙を流してしまった。


「謝るのは私の方です」


義勇さんはいつだって私の味方でいてくれた。
彩さんの時だって、ずっと信じてくれた。


「義勇さん、ごめんなさい。あの時責めてしまって自分の気持ちを抑えられなくて」


「いや、いい」


「それから、私のことを責めないでくれて、庇ってくれて…ありがとうございます」


伊之助ありがとう。
伊之助のおかげで私は今涙を流さないでいる。

繋いだままの手から義勇さんの熱が伝わってくる。

俯いて少し頰を赤く染めながらじっと私の顔を見る義勇さん…どうしたんだろ?


「義勇さん?」


名前を呼んで顔を覗き込んだ時。


「…好きだ」


顔を上げてそう言った。
覗き込んでたせいで顔が近い。


「え?あ、はい…」


よく分からなくて変な返事をしながら少し離れた。


「俺が責めなかったのも庇ったのもAだからだ」


「…私、だから?」


「他の奴ならしない」


義勇さんの中で私は特別な仲間って事か。


「…だから、」


納得した後にまた続ける義勇さん。
ずっと目が合ってるから気まずくなって逸らした。


「A」


だけど義勇さんの手がまた頰に触れて視線を戻される。


「俺はお前をひとりの女性として好いている」


好いてる?
そっか、好きなんだ…

…私のこと?


理解した瞬間、顔にぶわっと熱が集まる。


「え、え…わ、私ですか?」


「ああ」


いや、知らなかったことはないけど。
盗み聞きしたけど…

まさか直接言われるなんて考えてもなかった。


「…その、お気持ちは嬉しいですけど」


断るしかない。
…いや、断るってなんだ?別にお付き合いを申し込まれたわけでもないじゃん。


「…えっと、」


なんて言えばいいかわからなくなってとりあえず下を向いた。


「…出来ることならお前と共に過ごしたかった」


それはつまり…
義勇さんはゆっくり両方の手を私から離した。


「A、お前の気持ちは分かってる」


そう言って寂しげな表情をする義勇さんに何も言えなくなった。

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作者名:enen♪ | 作成日時:2020年3月29日 12時

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