溺愛される鬼少女③ (ページ32)

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涙がお似合い② ページ32

「じゃあ俺たちが出て行けば、Aは元気になるわけ？」

枕で顔を隠したまま善逸の問いを無視した。

「なんないじゃん。だってAは馬鹿だしさ」

普段の私なら言い返したかな…
だけどもう馬鹿でも阿呆でもなんでもいい。

「…アオイさん、」

善逸がアオイに何か言ったみたいだけど
それもどうでもいい。

バタバタと走る音が聞こえたからきっとアオイは出て行ったんだろう。

「Aだけが辛いんじゃない」

善逸の言葉が重くのしかかってくる。

「蝶屋敷の女の子達だって仲間たちだって辛い過去を乗り越えてるじゃん」

「…そんなの、知ってる」

私を責めてるの？
何が言いたいの？

「俺と伊之助は親の温もりとか知らない」

「俺は猪が親だ」

「はいはい」

だんだん善逸が近づいてくる気配がする。

「炭治郎だって家族も失くして妹は鬼になっただろ」

善逸の言葉にイライラする。

私だけが辛いわけじゃないの分かってる。
分かってるけど、どうしようもないじゃん。

みんな辛いから我慢なんて綺麗事でしかない。

「Aは人の悩みをよく理解してるだろ」

「…っだからって何が言いたいの！？」

勢いよく立ち上がって善逸に枕を投げつけた。

「善逸は責めてるわけじゃないよ」

だけどそれを受け止めたのは炭治郎だった。

「炭治郎遅い」

「遅かったな文八郎」

ふたりにそう言われて苦笑いをした炭治郎。

「じゃあ、何なの…」

じわじわと目に涙が溜まってくる。
責められた気分で追い詰められた気分で

息苦しい。

「俺たちはAだからこそ分かると思うんだ」

泣きそうになるくらい優しい炭治郎の声。

「悩みはひとりで抱え込むものじゃないだろう」

意味が分かってくるとボロボロ涙が落ちてくる。

「あーあ。また泣いた」

近づいてきて羽織の裾で涙を拭いてくれる善逸を押し返す気もなくて

「みんな辛い過去を持ってるからこそ支え合うべきなんだ」

「お前はひとりじゃねーだろ！俺たちがいる」

ずっと泣いてばかりだった私は
馬鹿みたいに時間使ってしまったらしい。