第437話 願い誓い夢うつつ ページ13
いつものように自室にこもったサクラは、傍にいるファイに複雑な心情を吐露していた。
ベッドにうつ伏せたその手はシーツをぎゅっと握っている。
サクラだって分かっているのだ。
自分が探す小狼と、現在旅を共にしている『小狼』が別の存在であるということは。
だから彼らを同一視はしていない。
それでも。
例えば、凛とした中にも少年らしさを残した声。
例えば、ちょっとした癖や習慣、些細な仕草。
例えば、強い決意を秘めた眼差し。
二人が似ているのは顔だけじゃない。
「同じ所を、似てる所を見つける度に、駄目なの」
だから、彼を見るとどうしても思ってしまう。
「どうして……今、目の前にいるのが、小狼君じゃないんだろうって……」
インフィニティの夜が更けていく。
『小狼』は酒に酔って“面白いこと”になったのち、ソファで横たわって眠りについてしまった。
「『小狼』、酔うと面白いね。でも心配事たくさんあるからかな、すぐ寝ちゃった」
「昨日まで満足に眠れてなかったから、ってのもあるかも。ましてや今日は試合があって疲れてただろうし」
モコナとAは『小狼』を起こさないようにひそひそとささやき合う。
二人の手にはまだグラスが握られたまま。
「……姫もあの調子だしな」
実際、今回は危なかった。
あそこで『小狼』が立ち上がってくれなければ、勝利することはできなかったかもしれない。
東京を出てから辛いことは確かに何度もあった。
小狼もいなくなってしまったし。
けれど、それだけではないと黒鋼は言った。
「何か隠してやがる。前の小娘みてえに」
「突然私に振るのやめてよね。今は罪悪感あるんだから……それで、隠してるってのはファイが？ サクラが？」
「……どっちもだが、特に姫がな」
黒鋼はモコナに気付いたことはないかと聞いてみたものの、「起きてる間はないと思う」という返答の最後に「でも」がついた。
「モコナが眠ってる間はわからない。モコナが寝ててもお話しは出来るの。だからモコナが眠ってる間に侑子と話したら、モコナ分からない」
モコナに眠ってもらって通信、というのはAも『東京』で使った手だ。
あの二人が同じことをやっていたのなら当然、モコナが彼らの動向を知り得るはずもない。
「それでも……守る……必ず……」
自分たちの会話で意識が浮上してしまったのか、瞼を押し上げて『小狼』がうわ言を呟く。
しかし黒鋼が「寝ろ」と手で目を覆ってやると、すぐに再び寝息が聞こえてきた。
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白野 - 最初から一気に読んでしまうくらいとても面白かったです！続きを楽しみにお待ちしています！ (2021年11月3日 22時) (
レス) id: 9415252d02 (このIDを非表示/違反報告)
輝石 コハク(プロフ) - まめさん» コメントありがとうございます！ 1から10まで一気に！？ ありがとうございます、そしてお疲れ様です！ しかも読みやすいと言って頂けるとか重ね重ねありがとうございます！！ まだ28巻中の半分を超えたぐらいなので、これからもお付き合い頂けると幸いです！ (2020年5月15日 16時) (レス) id: 75674cf5a0 (このIDを非表示/違反報告)
輝石 コハク(プロフ) - あゆさん» 長らく音沙汰なしでごめんなさい！ 色々あって時間を取れずにいましたが、完結させると豪語した以上は少しずつでもお話を書き続けていきますので！ 筆が遅い分内容も丁寧に……なるかは分かりませんが、よろしければこれからもお付き合いください！ (2020年5月15日 16時) (レス) id: 75674cf5a0 (このIDを非表示/違反報告)
まめ - はじめから一気に読みました！！とても面白くてすいすい読めました！更新頑張ってください(* ´ ▽ ` *) (2020年5月12日 17時) (レス) id: dd4ecb1951 (このIDを非表示/違反報告)
あゆ - 復帰(？)、おめでとうございます！ (2020年5月9日 18時) (レス) id: 3afd599366 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：輝石 コハク | 作成日時：2019年4月15日 22時
