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車の中で、五条は不意に口を開く。
「保育園、どうだった?」
「……………わかんない。」
「……………なにか、嫌なこととかされてない?」
「……………たぶん。」
こういう時、なんて聞いたらいいのか分からない。生憎子供の接し方なんて習ってこなかったわけだ。彼女も彼女でまた、楽しい、嬉しい、辛い、苦しい、嫌だ、それらの感情の情緒がまだはっきりと分かっていない。
そんな彼女を相手にどうやって質問を投げかければいい。
「はい、手洗おうね〜」
洗面台の横にある台を引きずって持っていき、彼女はそこに立つとパシャパシャと手を洗う。包帯を外しながらふと鏡を見る。瓜二つの容姿は日本人離れしていて、ここら辺では浮いてしまう。
白髪の髪はサラサラと絹のようで、光に照らせばキラキラと輝く。自分のものよりも澄み渡るような空のように輝く碧い眼はとても美しく、我が子ながら見惚れてしまう。白い肌に通った鼻筋。長く白い睫毛。ぱっちりとした二重にぷっくりとしたピンク色の唇。まるで天使のよう。
親バカだと思うだろう。しかしこれが事実なのだ。似ているけれど似ていないような、そんな感じ。女の子だからだろうか。これに羽と輪っかさえあればもう天使だ。でもそんな浮世離れしすぎた容姿は、時に彼女を傷つける。
「今夜はカレーだよ〜!甘口だから安心してね!」
「……うん。」
「食べたら一緒にお風呂入って明日の準備しようね〜」
女の子は父親に似ると幸せになるなんて聞くが、果たしてそれは本当なのだろうか。似てしまったが故に母親に虐げられ、今世間の波に溶け込めずにいる。
保育園で誰かが言っていた。
"「あんなに可愛くて、恵まれてるわね。」"
本当にそうなのだろうか?世間の一般人からすれば嫌味にさえ聞こえるその言葉だが、間違いではない。事実、彼女はその容姿によって苦しめられていた。
彼の場合、五条悟だったからその言葉さえも軽く交し、気にも止めていなかった。顔の良さは幼いながらに自覚していたし、そんな言葉よりも"最強"というレッテルの方が重くズッシリと身体にのしかかっている。それに比べれば、子供の戯言などなんてことない。しかし、彼女にとって言葉の刃とはどれほど重く心に突き刺さるのだろう。
明日、本当に彼女を保育園に送り出してもいいのだろうか。小さく溜息をつきながら、カレーを水で流し込む。
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吹雪 - 36話はちょっぴり泣いちゃったけど、37わの七海さんの舌打ちとかあと出しはなしとかで涙が吹き飛びましたよ! (2022年9月6日 20時) (レス) @page38 id: ad117a8b13 (このIDを非表示/違反報告)
ハルカ(プロフ) - ほんとにこの小説大好きすぎて最新話まで何回も読み返しました😂💕 (2022年4月11日 22時) (レス) id: 38495df96a (このIDを非表示/違反報告)
細かくてすみません。 - 13話の「浴室に座る」という部分、「湯船に浸かる」か「浴槽」ではないでしょうか?
20話は「郵送」ではなく「配送」ではないでしょうか?
こういう夢主子育てもの大好きです。更新楽しみにしてます♪ (2021年4月14日 17時) (携帯から) (レス) id: 4f4058a2da (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 五条先生のパパ好きすぎる(*´ー`*)立派な親バカですねww夢主ちゃんがこれからどう成長していくのが楽しみです。更新頑張ってください! (2021年4月10日 22時) (レス) id: fbb43f1a3d (このIDを非表示/違反報告)
ハニー - 面白いです!更新頑張ってください! (2021年4月7日 6時) (レス) id: b6d2dcf77b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花蛸花 | 作成日時:2021年4月5日 3時