・15 ページ15
「……傑に少し聞いてはいたが………本当にやらかしたんだな。」
「やらかしちゃったんですよ。」
五条の膝の上に座る彼女を夜蛾はじーっと見つめた。見れば見るほど五条にそっくりな彼女にこれは現実を受け入れるしかない、とため息をついた。自分の元教え子がいつの間にか子供を作っていて、その子供の存在を最近になって認知したという衝撃的事実に病みそうなレベルだ。問題児と言っても、ここまで来るともはや問題児の域を超えている。
あまり夜蛾に見つめられすぎたAは五条の服の袖をきゅっと握った。
「大丈夫だよ、A。この人ね、僕の元先生で、ここの学長さんなの。」
「…………がくちょ………?」
「そ、学長さん。いい人だよ、顔怖いけど。」
「一言余計だ。」
「さ、A。教えた通りに挨拶してごらん?」
「……ご、じょう、A…です……」
「よく出来ました〜!さすが僕の娘!」
よしよし〜と優しく撫でる五条を見て、思っていたよりもずっと父親をやれていることに驚いた。五条の事だから、「めんどくせ〜やりたくね〜本家に押し付けちゃお。」という感じだとばかり思っていた。
夏油の言っていたとおり本気で育てるつもりのようだ。
「本家には報告したのか。」
「一応ね。ギャンギャンうるさかったけど、六眼持ちだって言ったらあっさり引き下がったよ。単純だよね〜」
「……Aと言ったな。私は夜蛾正道だ。困ったことがあればいつでも私を頼ってこい。」
「……………うん。」
「君にこれをやろう。」
そう言って差し出したのは呪力の籠っていない普通の兎の人形。口に人参をくわえたそれをAは夜蛾から恐る恐る受け取る。
「良かったね〜!ほら、お礼は?」
「…………?」
「よし、僕の真似してみよう!ありがとうございます!」
「………ありがとう……ご、ざいます……?」
「よく出来ました〜!」
パチパチパチと手を叩いて自分のことのように喜ぶ姿はもろ父親。問題児も子供が出来れば少しはまともになるのかと思ったが、その子供の存在すら認知していなかったことを思い出し一気に現実に引き戻された。
問題児はいくつになってもいつになっても問題児だ。
3273人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
吹雪 - 36話はちょっぴり泣いちゃったけど、37わの七海さんの舌打ちとかあと出しはなしとかで涙が吹き飛びましたよ! (2022年9月6日 20時) (レス) @page38 id: ad117a8b13 (このIDを非表示/違反報告)
ハルカ(プロフ) - ほんとにこの小説大好きすぎて最新話まで何回も読み返しました😂💕 (2022年4月11日 22時) (レス) id: 38495df96a (このIDを非表示/違反報告)
細かくてすみません。 - 13話の「浴室に座る」という部分、「湯船に浸かる」か「浴槽」ではないでしょうか?
20話は「郵送」ではなく「配送」ではないでしょうか?
こういう夢主子育てもの大好きです。更新楽しみにしてます♪ (2021年4月14日 17時) (携帯から) (レス) id: 4f4058a2da (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 五条先生のパパ好きすぎる(*´ー`*)立派な親バカですねww夢主ちゃんがこれからどう成長していくのが楽しみです。更新頑張ってください! (2021年4月10日 22時) (レス) id: fbb43f1a3d (このIDを非表示/違反報告)
ハニー - 面白いです!更新頑張ってください! (2021年4月7日 6時) (レス) id: b6d2dcf77b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:花蛸花 | 作成日時:2021年4月5日 3時