・10 ページ10
「Aちゃん……!」
「真理子おばさん……!」
凍氷家新本館。彼女は真理子と呼ばれた女性に抱きつくと、ぎゅっとその体を抱きしめた。
「良かった……無事で……あなた達まで死んでしまったなんて事になったら、私は……」
「僕も昭義兄さんも無事だよ……おじさんは……」
「A……!無事でよかった……!」
奥から出てきた男性。恐らく、叔父だろう。彼は彼女を抱きしめると、夏油の存在に気づく。
「君は……もしかして、夏油くんかい?」
「あ、はい。夏油傑と言います。」
「はじめまして。兄さんから話は聞いてるよ。凍氷誠一郎の弟の慎一郎だ。」
「妻の真理子です。」
「はじめまして……」
「……ごめんね、二人にあとを任せてしまって………遺体は高専で引き取ったよ。………葬式は………出来ないけど………」
「あなたが気を病むことじゃないわ。」
「納骨も……夜蛾先生に……ごめん、勝手に……」
「……いいんだ。お前と昭義が無事でよかった。後のことは俺たちに任せておけ。お前の部屋も、昭義の部屋も、綺麗にして待っておくから。お前も、たまには帰ってきておくれ。」
「……うん。」
誠一郎とよく似た笑顔を浮かべて、彼女の頭を優しく撫でる。元気そうな二人の姿に、Aは安心したようにほっと息を吐いた。
「わざわざ来てくれてありがとう。夏油くんも、ありがとうね。」
「いえ、私にはこれくらいのことしか出来ませんから……」
「……そろそろ、行くよ。ごめんね。」
「ううん。ありがとう。……また、お手紙書くわね。」
「うん……」
もう一度真理子を抱きしめたAは、そのまま背を向けて元来た道を歩いた。
「もう良かったの?」
「……うん。顔見れたから。」
「………お葬式、しなかったんだね。」
「………うん。兄さんも今のままじゃ葬式に出られないし、屋敷の事もあるしね………僕の我儘だよ。」
「……いや、きっとその方が良かったよ。」
「………うん。」
彼女の手を優しく握ると、キュッと握り返してくる。小さな手。この小さな手で、これから抱えきれないほど大きなものを持つことになる。
一族の当主とは、どれだけ重たいものなのだろう。
1440人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
moo(プロフ) - まさかの展開に驚きました!幸せ家族で良かったです! (8月9日 3時) (レス) @page46 id: e3fdbdb203 (このIDを非表示/違反報告)
43yomi1(プロフ) - いきなりすみません…すっごく面白くて、楽しませて貰ってます!!応援してます!!更新頑張って下さい! (2021年3月3日 9時) (レス) id: 674eb44c7b (このIDを非表示/違反報告)
レナ(プロフ) - 多分ですけど上の連中が練習になってます! (2021年2月26日 23時) (レス) id: 46e621c864 (このIDを非表示/違反報告)
Tyina(プロフ) - 花蛸花さん» わざわざありがとうございます!そのお話、楽しみにしてます!! (2021年2月26日 0時) (レス) id: 7eae784acc (このIDを非表示/違反報告)
Tyina(プロフ) - あの、質問なんですけど、いつ美々子と菜々子を助けたんですか?最新読んで「その話あったかな……?」と思ってしまいまして……夏油さん推しなのでみんなハッピー状態なのがすっごい見てて幸せになりました!! (2021年2月25日 22時) (レス) id: 7eae784acc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:花蛸花 | 作成日時:2021年2月22日 2時