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静かな喫茶店。音楽が優雅に流れるテラス席で、露西亜帽を被った一人の男が、優雅に紅茶を嗜んでいる。その男___フョードル・ドストエフスキー___の座る席に近づいたのは、プライベートなのか、私服姿のAだった。ハイウェストのパンツに、淡い青色のシャツ、少し踵の高いパンプスを合わせた、何時もよりも少しラフな服装だ。ドストエフスキーは彼女に気付いたのか、ゆっくりと顔を上げて笑みを浮かべる。





「お久しぶりですね。Aさん。」

「そうでしたか?」

「はい。最後に会ったのは、二ヶ月前でしたから。」





Aは手提げ鞄(ハンドバッグ)を背もたれに置き、静かに椅子に座ると、店員に紅茶を頼んだ。





「貴方は何時も突然に私を誘いますね。」

「友人に会いたい、という気持ちは、可笑しなことではないでしょう?」

「それではもう少し前もって連絡してきてくださいな。私にも予定がありますから。」

「探偵社のお仕事ですか?」

「……話回るの早すぎません?」





運ばれてきた紅茶。傍に置かれたミルクと角砂糖には手も付けず、それをゆっくりと飲む。





「僕の誘いはあんなに断ったと言うのに。」

「成り行きですよ。自分の異能を好きになれる、と聞いたので。貴方の組織では私の異能は好きになれそうにない。」

「貴方が自分の異能を好ましく思いたいだなんて、知りませんでしたね。」

「異能力の無い世界を作るより、私が異能力を好きになった方が手早いと思いませんか?」

「……やはり貴方は面白い。」





ドストエフスキーはくつくつと笑った。彼女は現実的だった。然し、異能力の無い世界を作りたいというドストエフスキーの思想には、彼女も少なからず賛同の意を示している。





「其れで、異能力を好きになることは出来ましたか?」

「……いいえ。きっと私を納得させられるものはこの先も現れませんよ。私が、自分の異能()を赦し愛する日は訪れないでしょう。」





彼女の長い睫毛が伏せられる。悲しんでいるのか、物思いにふけっているのか、何を考えているのか分からない。

あぁ、面白い。ドストエフスキーは静かに笑みを浮かべた。

今日の彼は、まだ一度も爪を噛んでいない。

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眠いちゃん - 続き楽しみにしてます! (2023年3月3日 14時) (レス) id: acdc06f415 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 面白いです!続き待ってます! (2023年2月3日 5時) (レス) id: 846f3d2d4a (このIDを非表示/違反報告)
- とても話がわかりやすく面白いです!!続き待ってます!! (2023年1月7日 23時) (レス) @page28 id: d9cbcf96d1 (このIDを非表示/違反報告)
かな(プロフ) - 面白いです‼︎応援してます (2022年12月27日 15時) (レス) @page28 id: a32747b1ee (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:花蛸花 | 作成日時:2022年5月29日 16時

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