坂口(妹)-2【文スト】 (ページ12)

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髪を結い上げられ、眼鏡からコンタクトに変える。化粧は軽くしていたものの、もう少し派手な方がいいと目元を明るく、赤く鮮やかな紅を塗られる。

｢うんうん、私の見立て通りじゃ。｣

尾崎は満足気だ。Aはぐったりしている。まさか渋々来た茶会でこんなにも着飾られるなんて思いもしなかった。｢さ、エリス嬢達を待たせておる。｣と手を引かれ、Aは気慣れぬ振袖に戸惑いながらも尾崎の後を着いていく。

｢待たせたのう。どうじゃ、スーツや制服も良いが、この振袖も悪くなかろう？｣

Aは居心地が悪そうに袖に触れた。敵組織な上、勧誘を断り続け、なんならこの茶会だって行けばなんとかなるの気分で来ている。ここまでされると申し訳なくなってきて、今すぐ帰りたいところだ。然し、彼女らはそれを許してはくれない。

｢素敵！綺麗よA！｣

｢……恐縮です。｣

｢似合ってんぜ嬢ちゃん。綺麗にしてもらったじゃねぇか。｣

｢そうじゃろうそうじゃろう。さ、席に座って茶会を始めよう。中也、彼女のエスコートは頼んだぞ。｣

｢はい、姐さん。お手をどうぞ、お嬢さん。｣

右手を胸に添え、少しお辞儀をしながら左手を差し出してくる。揶揄うようににんまりと口角をあげるその姿がなんとも気に食わない。Aは少しの間の後｢どうも｣と呟いてその手に右手を添えた。

｢紅茶は飲めるじゃろう？｣

｢はい。｣

｢砂糖は？｣

｢結構です。｣

椅子に腰かけると、そのすぐ隣にエリスがご機嫌な様子で座った。目の前には中原が、その隣には尾崎が座る。

｢私あなたとずっとお話してみたかったの！｣

｢光栄です。｣

｢この西洋菓子(ケエキ)美味しいわよ！食べて！｣

｢け、西洋菓子……ですか……｣

彼女は困ったように眉を下げた。

｢なんじゃ、甘い物は好まぬかえ？｣

｢………いえ、大丈夫です。頂いてよろしいですか、エリスさん。｣

｢勿論よ！｣

Aはエリスから西洋菓子の乗った皿を受け取る。中原が紅茶の入ったカップをその傍に置いた。Aは西洋菓子をじっと見たあと、｢いただきます｣と軽く頭を下げてフォークを手に取った。