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坂口とAの約束。外で見かけてもなるだけ声を掛けないこと。特に人と居る時には絶対に声をかけてはならない。知らない人には絶対について行かない。何かあったら防犯ブザーの裏にある黒い釦を強く押すこと。
その防犯ブザーの裏にある黒い釦は、坂口の携帯に繋がっているものだった。何かあった時のためにと、彼が持たせたものだ。
彼女は気づかなかったのだ。赤髪の男と包帯の男に。当たり前だ。日陰になる隙間で休んでいたのだから姿が隠れていたのだ。彼女は咄嗟に坂口の背中に隠れる。
「怖がらせてしまったか?」
「兄さん、と呼んでいたけど……君は安吾の妹か何かかい?」
彼女と同じ目線になるようにしてしゃがんだ太宰が、彼女の顔を見ようと背中の方を覗き込む。それから逃げるように、彼女は坂口の身体を盾にして隠れていた。しかし、この男たちに見つかってしまってはもうそれも遅かった。
「おや、随分と警戒心が強いね。」
「当たり前です……こんな仕事をしていれば、この子にいつ何があるか分かりませんので。」
「その子は妹か?」
「……はい……あの……この事は……」
「分かっているよ。他言はしないから安心してくれたまえ。お嬢さん、私たちは安吾の友人だ。そう怖がらなくてもいい。お顔を見せてくれないかい?」
その声色は優しく、それで今まで何人もの女が落とされてきたことだろう。坂口からの頼みをすんなりと受け入れた太宰は、坂口の妹だという彼女に興味津々である。太宰がランドセルの肩紐を軽くちょんちょんと引いてみると、やっとその少女は坂口の背中から姿を見せた。
「わ、安吾そっくり。」
「まだ小学生か……名前は?」
「……兄さん。」
「いいですよ、言っても。」
普段、知らない人には名前を名乗るなと教えられているのだろう。どこの家でもそうだ。彼女は小さな口を開いた。
「……坂口……坂口Aです。」
警戒心剥き出しの彼女は、二人にそう名乗った。それが、彼女の名前だった_____
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琉亜 - うち的にはもうちょい安吾との絡み見せて頂きたい (2023年2月23日 23時) (レス) @page7 id: 5309fc8273 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花蛸花 | 作成日時:2022年4月29日 1時