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「谷崎くん……私はもうだめだ……Aが蛞蝓のものになるなんて……あの帽子置き場……どうやって潰してくれようか………」
「落ち着いて太宰さん!!!」
「ふふふふふ……」と不気味な笑みを漏らす太宰に、谷崎は震えていた。一方のAは面倒な兄だと、静かに紅茶を啜るばかりである。何とかしてくれ、と目で訴えて、やっとこさ動き出す。
「まぁまぁ、兄様落ち着いて。Aの一番は兄様だもの。兄様が一番かっこいいわ!」
「ほんとかい?」
頭を抱えてぶつぶつと何かを呟いていたははずの太宰はばっと顔を上げて彼女を見た。なんとも単純な男である。
「勿論!背は高いし御顔立ちは整っておいでですし、その髪も瞳も声も、優れた頭脳も全て素敵だわ!流石は私の兄様!」
「そうだろう、そうだろうとも!私こそAの兄として相応しい男なのだよ!Aの隣に立っても不思議でないこの花のある容姿!正にAの兄と声を大にして言える男は、世界広しと言えどこの私だけなのだ!」
「元気が戻ったようで何より。」
胸を張る太宰を見て、彼女は呆れたような様子で紅茶のカップを手に取る。
「Aって……太宰さんの扱い上手いですわよね……」
「昔は兄様が仕事をしない時、やる気を出させるのが私の役目だったもの。私の最初の任務はそれだったわ。」
「苦労してますわね。」
「そうでも無いわよ。兄様大好き♡って言っておけば大抵の言うことは聞いてくれるような人だったから。」
「兄様もAの事が大好きだよ〜♡」
都合のいいところだけを切り取った太宰。Aに抱きつき、頬をすりすりと寄せる。「暑苦しい」Aは頬を押し返すが、その表情は本気で嫌がっているようには見えなかった。可愛らしい兄妹の戯れ。そう、これが可愛い兄妹の戯れなのだ。
「二人とも仲がよろしいのね!兄様、私達も……♡」
「ちょ、ナオミ……ここ外……外……お店だから……!あっ、」
「お店じゃなければよろしいの?うふふ♡」
妹に迫られて顔を真っ赤にする兄。これは決して可愛い兄妹、等ではない。踏み込んでは行けない兄妹だ。ある意味、太宰とAも消して踏み込んではならない兄妹である事に違いは無いのだが。
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Napia - 完結おめでとうございます!! お疲れ様です!! 毎週のように「更新してるかな?」とウキウキしながらみてました!! 番外編も読みますぅ!! (2022年4月26日 16時) (レス) @page37 id: bc58708f8e (このIDを非表示/違反報告)
あんころ(プロフ) - お疲れ様でした!完結おめでとうございます!ダントツで面白かったです!! (2022年4月23日 19時) (レス) @page36 id: 9e178210e2 (このIDを非表示/違反報告)
クリスタルパワー(プロフ) - 完結おめでとうございます!!いつも更新を楽しみにしてました!番外編があったら楽しみにしてます! (2022年4月23日 19時) (レス) id: 47ef91694a (このIDを非表示/違反報告)
向月葵(プロフ) - 完結おめでとうございます〜!最初の頃からずっと応援していたので、見届けられてほんとに嬉しいですし、めちゃくちゃ面白かったです!番外編も楽しみにしてますね。 (2022年4月23日 19時) (レス) @page36 id: b81c3ee352 (このIDを非表示/違反報告)
Hazuki(プロフ) - 凄く面白いです!15ページの「鼻歌」が「花歌」になっています…間違っていればすいません。これからも更新楽しみにしています!! (2022年4月21日 20時) (レス) @page15 id: 140c609c2d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花蛸花 | 作成日時:2022年4月16日 11時