捨てられた妹-7【文スト】

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中原は自分の身支度をしながら時計を見る。既に彼女は拠点に行ってしまったらしい。迷える羊と協定を交わして一年。あの半年後、式を挙げた。正直挙げる気もなかった式だが、周りからの催促の末行った。式自体は簡単なもので、ドレスを着て、写真を撮ってブーケトスをしただけだった。誓いの言葉も披露宴もない。誓う必要なんてなかった。神に誓いを立てるまでもなく、当たり前のことだから。

中原は身支度を整え、外に待たせていた車に乗る。今日は全首領である森がポートマフィアに顔を出す。その理由は、彼女が呼び出したからだ。突然の事で、幹部も何も聞かされていない。首領執務室に入ると、そこには既に森の姿があった。





｢やぁ、中也くん。元気そうでなにより。｣

｢お久しぶりです。森さん。｣

｢お義父さんと呼んでくれてもいいんだよ？｣

｢それはちょっと。｣





恐れ多い。森さんで精一杯だ。今まで首領と呼んでいたのだから当然といえば当然だ。執務室には、五大幹部も勢揃いしていた。





｢A、幹部に父親に、突然呼び出してなんだ？｣

｢よくぞ聞いてくれたよヴェルレエヌさん！｣





Aは一枚の封筒を取りだした。何の変哲もない、どこにでもある封筒だ。





｢先日、探偵社に用があってね。その時与謝野さんと話したんだ。最近体調が優れないことが多いって。｣





彼女は痛みに強い。然し、腹痛や頭痛は多少感じるし、体調不良も感じることが出来る。身体の体内の免疫細胞までは操ることが出来ないのだ。





｢食欲は湧かないし月経は来ないし吐き気まではなくとも身体がだる重い。｣

｢……！？｣

｢……！まさかお主……！中也、良くやったぞ！｣





最初に気がついたのは森と尾崎だ。尾崎は中原の背中を叩く。森は口元を抑えてあわあわとしている。その様子に、ヴェルレエヌも気がついたようだ。両手で顔を覆って天を仰いでいる。





｢中也さん。｣

｢あん？｣





尾崎に叩かれた背中を摩り、中原が首を傾げた。





｢君は父親になるんだ。｣

｢あぁ？ああそう…………なんだって？｣





もう一度聞き返す中原に、彼女は一枚の写真を見せた。





｢私のお腹に君の子供がいるんだよ。｣





芥川と横光が顔を見合せた。それはもう驚いた顔で。中原は彼女に近寄ると、その写真を奪って凝視する。わなわなと体が震え、その写真と彼女の腹を何度も見比べたあと、彼女を抱きかかえた。





｢よっしゃ！！！良くやった！！！｣

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