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彼女達は軽く店を見て回った。谷崎と太宰の両手には、既に沢山のショッパーが持たれている。それぞれ店の種類が違う中で、一つだけ同じ店のショッパーがあった。それはAからナオミへの贈呈品。可愛らしいお揃いのワンピースが入っているものだ。色違いで選び、神無月雅彦の件で随分とお世話になったからと言うことで贈呈されたものだ。値段は聞かない方がいい。

そして現在、彼女はいかにも高そうな時計屋で頭を悩ませた。





「時計なら、今でもいいのを付けてるじゃないか。英国製かい?」

「そうよ。でも今回買うのは私のじゃなくて荷風くんのよ。」

「荷風くん?」





ナオミは首を傾げた。





「ええそう。マフィアでは普通、新人を勧誘した者が責任をもって面倒を見る。その徵に、身につける品をひとつ購って与える習わしがあるのよ。衣服は買ってあげたけど、それらしいものをまだ与えていなかったからね。」





以前、彼が屋敷から持ってきて欲しいと願った母親の形見の青い時計。所々に錆があったり、(ベルト)が壊れていたりで修理に出したりとしてみたは良いが、彼には少し大き過ぎる。時間が分からないのはとても困る。そのため、彼女は自分が勧誘した部下には必ず時計を与えるようにしていた。それは即ち、己の一生涯の時間を彼女に捧げることを意味している、と言っても過言ではないだろう。





「時間は大事だからね。一々形態で確認している姿がどうにも締りが無く感じてしまうから、何か一ついい物をと思って。」

「なるほど……でも、荷風くんは小さいですし、ここに置いてあるものは少し大きいんではないんですの?」

「そうなのよね〜……」

「じゃあ、ああいうのはどうだい?」





そう言って太宰が刺したのは、懐中時計が沢山並ぶショーケースだった。「あぁ、あれなら良さそう」と彼女はそのショーケースを覗き込んだ。様々な彫金の施された懐中時計。それをじっと見たあと、細かな彫金の施されたものを指した。





「これにしよう。」





その値段を見た谷崎がまた「ひぇ…」と声をあげる。

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Napia - 完結おめでとうございます!! お疲れ様です!! 毎週のように「更新してるかな?」とウキウキしながらみてました!! 番外編も読みますぅ!! (2022年4月26日 16時) (レス) @page37 id: bc58708f8e (このIDを非表示/違反報告)
あんころ(プロフ) - お疲れ様でした!完結おめでとうございます!ダントツで面白かったです!! (2022年4月23日 19時) (レス) @page36 id: 9e178210e2 (このIDを非表示/違反報告)
クリスタルパワー(プロフ) - 完結おめでとうございます!!いつも更新を楽しみにしてました!番外編があったら楽しみにしてます! (2022年4月23日 19時) (レス) id: 47ef91694a (このIDを非表示/違反報告)
向月葵(プロフ) - 完結おめでとうございます〜!最初の頃からずっと応援していたので、見届けられてほんとに嬉しいですし、めちゃくちゃ面白かったです!番外編も楽しみにしてますね。 (2022年4月23日 19時) (レス) @page36 id: b81c3ee352 (このIDを非表示/違反報告)
Hazuki(プロフ) - 凄く面白いです!15ページの「鼻歌」が「花歌」になっています…間違っていればすいません。これからも更新楽しみにしています!! (2022年4月21日 20時) (レス) @page15 id: 140c609c2d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:花蛸花 | 作成日時:2022年4月16日 11時

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