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「Aちゃん、滅多なことを言ってはいけないよ。」
その声に振り向くと、構成員たちの背筋が伸びた。その場に跪き直し、頭を深々と下げる。
「森さん!」
「そろそろAちゃんが限界を迎えるんじゃないかと思ってね。」
森は構成員たちに外に出るようにと合図をすると、構成員たちはそそくさと外に出る。森は彼女を椅子に座らせ、その目の前にしゃがんだ。彼女と同じくらいの目線に来ると、彼女の手に握られた書類に目を落とす。
「こんなにも難しい書類を毎日捌いて、君は偉いね。こんなにも大きな抗争の中、少しも君は怯まない。凄いね、偉いよ。」
「森さん……私もう嫌……毎日毎日文字ばっかり……兄様達にだって会えてないのに……部下は使えない人しかいない……としちゃんは抗争に行っちゃうし……」
「うん、そうだね。でもね、太宰くんも横光くんも中也くんも、紅葉くんだってこの街のために戦ってくれているんだよ。君はこんな街滅んでしまえばいいと言うけれど、みんな街を守るために戦っている。君が今持っている書類だって、この街を守るために必要不可欠なものなんだよ?」
森は笑みを浮かべながら小首を傾げてみせる。
「だからと言って、君に少し負担をかけ過ぎたのは事実だ。すまなかった。でも、この街をまだ好きでいてくれないかな。」
「……うん。ごめんね、森さん。」
「君の謝る事じゃないさ。今日はもう休もう。この書類は私が何とかしてあげるからね。」
首領である森には別の仕事がある。然し、これ以上彼女に無理をさせる訳にはいかなかった。せめて彼女が責任を感じないために、この書類だけは終わらせておこう。森は彼女を抱えて、ぽんぽんと背中を優しく叩いた。幼い子を寝かし付けるように、身体を揺らす。昔と比べて少しばかり重くなったように感じた。これも成長だろう。
「君たち、Aちゃんは少し休ませるから今日一日だけ君達だけで何とか捌ききってくれるかい?明日になれば、この子も本調子に戻るはずだ。」
「は、はい、、、!」
すよすよと寝息を立てる彼女を見て、構成員たちも「ああ、ちゃんと子供なんだ」と何処か安心してしまう。
「子供ってなんで寝ると重くなるんだろうねぇ〜……ねぇ、エリスちゃん?」
「リンタロウが歳なだけ。」
「酷いなぁ〜……」
護衛用にと出されたエリスとそんな話をしながら、森は執務室へと向かっていった。
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作者名:花蛸花 | 作成日時:2022年4月10日 12時