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Aは織田を大層気に入った様子だった。織田も子供好きな一面があったようで、彼女の話をうんうんと優しく聞いてやるのだ。
「今日はAも楽しめたようでよかった。」
帰る頃には眠ってしまったAに外套をかけてやり、いつものように優しく抱えてやった。昔に比べれば、やはり少し重たくなった。背もぐんぐん伸びて居るのだから、その分重くなるのも当たり前だ。
「噂に聞くより、大分普通の少女だった。」
「噂……あぁ、あの噂か。昔よりも派手に捏造されたあの噂の事だね。」
「あぁ。気を悪くしたらすまない。」
「構わないよ。織田作は元より、そんな噂を信じないだろうしね。」
「ああ、信じていない。もし本当であったとして、今日のこの時間の中で、警戒する必要が無いことは明らかだ。」
すよすよと眠る彼女は、まるで安心しきっている。太宰の腕にすり寄って、にこにこと笑うのだ。何か、楽しい夢を見ているのだろう。
「ああ、私の妹が可愛い………こんなに可愛くていいのだろうか………」
「お前たちは血の繋がりはなかったな。」
「うん、ない。でも、この子は私の唯一の家族に違いはないよ。それにね、面白いことに、私と彼女はとても似ているんだ。」
「………あまり似ていないが。」
「外見の話じゃあないよ。この子は賢い。いつか私を追い越してしまうのではないかと今から不安だよ。兄として、この子に負ける訳にはいかないからね。」
太宰は愛おしそうにAを見詰めた。彼女は幽鬼と恐れられ、味方からも恐れられる太宰を人間らしくしてくれる。そんな存在だ。太宰が唯一愛する家族。
「……幸せそうで何よりだ。」
「幸せだからね。たまにこの子と遊んであげておくれよ。この子は随分と君を気に入ったようだし。」
「ああ、構わない。」
元より、雑用係の織田にとって、幼女の相手など造作もなかった。子供は可愛く、そして純粋だ。この暗闇のような組織の中で癒しを与えてくれる。暗い夜の冷たい風が、頬を撫でた。
「お前もAも、風邪をひかないようにな。」
太宰の頭を撫でたあと、Aの頭を起こさぬようにと優しく撫で、太宰とは反対の道へと歩いていった。
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作者名:花蛸花 | 作成日時:2022年4月10日 12時