・22 ページ22
｢ねぇ兄様、何処に行くの？｣
｢とってもいい所。｣
｢またそれ！｣
柔らかくまろい頬を膨らませながらも、彼女は太宰と繋いだ手を離そうとはしなかった。暗殺王事件から暫く、太宰と中原は今まで以上の功績を収め、幹部候補として名を馳せた。加入して一年そこいらの子供がだ。然し、その結果にケチを付ける者は誰もいなかった。
それに伴い、彼女にも数名部下が着いた。前回の事件で起こった始末書を捌いたのは、まさに彼女だった。齢十とは思えないその頭脳、手際の良さは、大人を圧巻とさせた。教えた事をなんでも吸収してくれるのは、正に幼さ故だろう。勿論前線には立たないので、彼女は後方支援のような役割を主としている。正に、優秀な人材とも取れる子供だった。
｢私の友人に会わせてあげようと思って。｣
｢兄様に友人なんていたの……？｣
｢Aってたまに辛辣だよね。そんなところも愛らしくて好き……♡｣
でれでれと彼女を見詰めるその姿は、何処かの幼女趣味の男とよく似ていた。
｢でも、夜のお出かけって新鮮で楽しみだわ！兄様はいつも何処かに行くのに、私だけお留守番なんだもの。｣
｢ごめんね。これからは偶に連れてきてあげるよ。きっと君も気に入るだろうさ。｣
太宰はとある店の前で足を止めた。『Lupin』と看板の掲げられたバーだ。
｢ここ、バーでしょ？私が入っていいの？｣
｢構わないさ。｣
太宰は彼女と手を繋いだまま、その店の扉を開けた。入ってすぐのカウンターでは、赤髪の男が蒸留酒を煽っていた。
｢やぁ、織田作！｣
太宰はやけに親しげな様子で彼に声をかけた。赤髪の男はちらりと其方に目をやったあと、酒杯を置いた。
｢太宰か。……その子供は？｣
｢私の妹だよ。｣
｢ああ、あの噂の………お前が何時も連れているという金髪の少女か。｣
｢その通り！｣
太宰はAを抱えると、自分と男の間の椅子に座らせた。
｢御機嫌よう！｣
｢ああ、御機嫌よう。｣
男はAに合わせるように、普段使い慣れないような言葉を使って彼女に挨拶を返した。彼女の噂は聞いていた。太宰に拾われた少女。精神操作系の異能を持ち、殺人的な身体能力を持ち、この幼さでありながら、既に何百と数え切れぬ程の人間を殺し、辺り一面を血の海にしたと言う噂だ。男自身、その噂を真に受けていた訳では無いが、噂からは想像も出来ぬほど、普通の幼い少女だった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 169人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：花蛸花
| 作成日時：2022年4月10日 12時
