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幼いながらにこの組織の全てを理解しているようだった。最初に会った時、彼女はただの少女だと思っていた。何も知らない、箱に仕舞われただけの少女。然し彼女はきっと、育てれば誰よりも黒く染まるだろう。

彼女は賢く、聡い。





「君は………このマフィアにとって武器になるだろう。」

「どうして?」

「…………君は賢く聡い。」





ヴェルレエヌは彼女の頭を優しく撫でた。





「読み聞かせ、だったな。俺がしてあげよう。今度読んで欲しい本を持ってくるといい。」

「ほんと!?ありがとうヴェルレエヌさん!」





色褪せた世界が色付くようだった。友人を失い、心のどこかにぽっかりと穴が空いてしまったようだった。そんな日常を、そんな心を、彼女なら埋めてくれるような気がしたのだ。その無邪気な笑顔が、癒してくれるような気がした。





「そうだ、ヴェルレエヌさん!私に稽古を付けて!」

「稽古……?」

「そう!ヴェルレエヌさんは、最強の暗殺王でしょう?私に戦い方を教えて!兄様がね、言ったの。自分を守るためなら戦い方を学んでもいいよって。中也や紅葉姉様は、筋がいいって褒めてくれるけど、いっつも簡単なことしか教えてくれないの!だから、お願い!」





彼女は指を絡め合わせながら両手を合わせ、きゅるきゅるとした目でヴェルレエヌを見上げる。その表情に、ぐっと心を掴まれる。





「い、……良いだろう。太宰くんには許可を取るんだぞ。」

「それなら、もう許可を貰ってあるわ!大きな怪我をしない程度に、ですって!」

「そうか。随分大事にされてるようで何よりだ。それじゃあ明日から、訓練を付けてやろう。今日のところは親睦を深めるとしようか。ここには温牛乳(ホットミルク)しかない。それでいいか?」

「もちろん!」

「今度、君が飲めそうなものを持ってきてもらうよう頼んでおく。」





ヴェルレエヌは彼女の頭を撫でて立ち上がる。友人のように、育てる、というのも悪くないかもしれない。彼女に限らず、この組織に貢献出来る暗殺者を育ててみようか。そんなことを考えながら、ヴェルレエヌは台所(キッチン)へと向かった。

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作者名:花蛸花 | 作成日時:2022年4月10日 12時

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