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「A、自己紹介が先だよ。」

「そうだった……、!ごめんなさい、ヴェルレエヌさん。私、太宰Aと言うのよ!以後御見知りおきを。」





黒いフレアスカァトの裾をちょんと摘んでお辞儀をする。






「……君の妹か?」

「えぇ。血は繋がってないですけど。可愛いでしょ?」

「あぁ、君に似ずな。」

「失礼じゃない、それ。」





ヴェルレエヌは少し笑い、目に前の彼女へと視線を向ける。





「御丁寧にありがとうレディ。君に会えて光栄だ。」

「私もよ!ねぇ兄様、少しヴェルレエヌさんと遊んでも構わない?」

「僕は構わないよ。いい、ヴェルレエヌさん。」

「……良いだろう。」

「兄様はお仕事があるんだから、早く行って!」

「え、そんな無理矢理追い出そうとする!?ちょ、に、兄様に聞かれてまずいことでも…あ、あぁー!!!」






Aにぐいぐいと身体を押されて、そのまま深地下隔離室(シェルター)から追い出されてしまった太宰。重たい扉が閉じて、がちゃりと鍵がかかる。

あんなにも必死な太宰は初めて見た。ヴェルレエヌは興味深くも思ったが、直ぐに手元の詩集へと視線が落とされ、読みかけの頁に栞を挟む。





「何を読んでいたの?」

「詩集だよ。興味がお有かい。」

「すっごく!私はよく本を読むのよ!お友達に読み聞かせもしてもらうの!でも、ヴェルレエヌさんが殺してしまうから、もう聞かせて貰えないの。代わりにヴェルレエヌさんが読み聞かせるのよ?いい?」





彼女は首を傾げてそう言った。彼は驚いた。彼女の言う友人、というのは、恐らく最初に暗殺した五人組の事だろうと予想が着いた。然し、彼女は少しも悲しげな表情を見せなかった。





「………君は、俺が憎くないのか?」

「憎い?どうして?」

「…………俺は君の友人を殺した。五人も。」

「そうね、貴方が殺したわ。でもそうなるように仕向けたのは森さんと兄様よ。森さんの暗殺を防ぐためにね。それがマフィアだもの、仕方ないわ!」

「………悲しくないのか?」

「悲しいわ。私の友人が沢山、貴方を斃すための戦いで命を落としたの。でも友人が亡くなったからって落ち込んでなんか居られないもの。ここはそういう組織で、皆それを分かってここにいるんだもの。そうでしょ?」





彼女は笑顔を浮かべながら、少し小首を傾げてそう言った。ぞわりとヴェルレエヌの背中を何かが走る。

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作者名:花蛸花 | 作成日時:2022年4月10日 12時

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