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百人以上の参列者が教会堂の両側に座っている。全員が黒い服を着て、項垂れ、沈黙する。赤いローブを纏った聖歌隊の少年たちが、高く優しい声で死者を悼んだ。
そして、広く寂しい教会の中央には＿＿＿五基の棺。
装飾はなく、黒い布がかけられているが、高級な棺だ。棺の側には家族らしい何人かの人々が項垂れ、啜り泣いている。
｢……森さん、……ピアノマン達は……｣
｢………彼らは死んだ。これはその為の葬儀だよ。君も、これから沢山の葬儀を目の当たりにするだろう。人の死とは何なのか、向き合うんだ。｣
中原と森に挟まれたAは、何が何だか分かっていなかった。人の死とは何か、理解出来そうで出来ない歳。特に彼女はそうだ。今まで地下に閉じこもって生きてきた。死とは何かを厳密に理解出来てはいない。｢中也……？｣と、項垂れる自身の服の袖を引く彼女の頭を、中原は優しく撫でた。
彼女が彼らのために作ったというクッキーは棺の中に花と共に供えられた。生きていれば今頃、笑顔を浮かべながらお茶会をしていたはずだった。読み聞かせの途中だった小説。あの続きを
どれもこれも、全てこれから先にずっと続く幸せだった。それが、一気に崩れ落ちた。自分のせいだ。中原は手を強く握る。
｢こんにちは！｣
直後、そんな大きな声が教会に響いた。流石の彼女でも、この場で大声を出さないものだと理解は出来る。思わず振り返った。そこには、青い背広の青年が立っており、当たりを見渡すと、つかつかと中也の方へと近寄った。
｢中也さん、お迎えに上がりました。｣
青年が大きな声でそう言うと、｢黙ってろ。葬儀中だ｣と、彼を見ぬまま、棺を見たまま言った。雰囲気的に、関係者でない事は確かだ。
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作者名：花蛸花
| 作成日時：2022年4月10日 12時
