・16 ページ16
静かな空間が数分続いた。話すにしてもどう切り出していいのか分からなくて、ただただ時間が過ぎていく。そんな中で、先に口を開いたのは彼女の方だった。
｢………私から、いいか。｣
｢うん。｣
｢……お前は私のこと、なんだと思ってる？｣
｢………え？｣
｢私は、別にお前と恋人でもないし、かと言って身体の関係でもない。だからお前が外で何してようと口は出せない。…でも、本音言うと嫌だ。
おかしいって思うだろ。私もそう思うけど、めちゃくちゃ嫌なんだよ。｣
そういった彼女の目は、真っ直ぐ彼を捉えていた。
｢なんでお前なんだろうなって、何回も思った。お前がたまに朝帰りしてるのなんて随分前から知ってたし、たまにチラチラ見えるキスマも背中の爪の跡も……全部見る度に苦しくなるのも全部お前で……なんで年下のお前にここまで心を掻き乱されてんのかも、なんで絶対お前じゃないとダメなのかも、全部わかんない。｣
そういった彼女は彼から顔を背け俯いた。情けなくも泣きそうになる。自分らしくない。だから顔を背けた。
いつもだ。恋心というものを自覚してから、いつも悩まされる。こんなに苦しいもんなのかと嫌にもなったが、それでも彼を嫌うことは出来なかった。
｢……私にもよく分からない。……最初は、すごく順調だと思ってた。でも…なん、て、いうか……もしも今以上の関係を望んで、今の関係が崩れて修復すら出来なくなったらと思うと、怖くて…もどかしさからイライラして、でも誰にもその気持ちを打ち明けることが出来なかった。それすらも出来ないくらい、…私はただただ、臆病だった。
でもそのせいで、傷つけた。…ごめん。｣
彼は迷うことなく、彼女の手を優しく包み込むように握った。一般女性の平均と比べれば少し大きく角張った手。その手でさえも、Aはいとも簡単に包んでしまう。
｢でも、もう臆病者はやめるよ。｣
｢……じゃあ、早く言えよ。｣
｢……こっち見て。｣
彼女の顔を覗き込むようにして見ると、真希はおずおずと彼の方を見た。いつもの彼女からは想像もつかない少女のような可愛らしい反応に、少し頬をあげる。
｢…笑うな、｣
まだ少し赤い頬を、触れるくらいの力でぺち、と叩かれ、ごめんと落ち着いた声で謝る。しばらくの間があったあと、再び口を開いた。
｢……きみが好きだよ。｣
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1495人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
魔灯 - 任務代わってくれる棘君優しいな 真希ちゃんと夢主君幸せになってくれー！ (2021年9月5日 17時) (
レス) id: 43f1bbcd44 (このIDを非表示/違反報告)
魔朝@Bsc(プロフ) - 幸穂ちゃんマジかぁ.............実幸ちゃん達も辛いやろなぁ..........夢主くんがこの一件をきっかけに大量虐殺とかおかさなきゃいいけど......とめて夏油さん！！ (2021年6月22日 20時) (レス) id: 9bfc59222b (このIDを非表示/違反報告)
都和(プロフ) - ここで辛い展開やってくると思わなかった、、、頑張れ息子くん！ (2021年6月22日 15時) (レス) id: a33a5cff70 (このIDを非表示/違反報告)
shinox2(プロフ) - 真希ちゃんが男前過ぎて……(泣)逆にかっこいい (2021年6月18日 16時) (レス) id: 947326f28f (このIDを非表示/違反報告)
M(プロフ) - ついに息子くんと真希ちゃんがッ!!!!!!!!嬉しい!!幸せ!!トキメキと癒しをありがとうございます!!今夜はお赤飯でお祝いしようと思います!!!!!!笑 (2021年6月9日 18時) (レス) id: addf3f5d58 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：花蛸花
| 作成日時：2021年6月6日 1時
