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｢ふふ、やはり欲しいですね、貴方は。その冷めたような笑みも、私に似た頭脳も、血のように冷たい赤も、何もかも素晴らしい。｣
｢冷めた笑顔とは失礼だね。それに、この頭の中身は君に寄せてるわけじゃない。元からだ。そして此処で残念なお知らせ。君がお気に入りのこの赤い目だけど、今はとても愉快なことになってるよ。｣
そう言って、少しずらされた包帯の隙間から現れたのは、宝石のように光り輝く翡翠色の瞳だった。
｢おや、僕はそれも好きですよ。｣
｢お前に口説かれても毛ほども嬉しくないんだけど。｣
｢それは残念。｣
ドストエフスキーは紅茶を飲みきると、カップを静かにソーサーに置いた。そして、紫色の瞳が不気味に歪んだ。
｢ポートマフィアを抜け、死の家の鼠に来る気はありませんか。｣
｢残念ながら。私はポートマフィアの首領になる事が決められてるからね。この美味しい話を蹴ってまでお前の所に行くと思う？｣
｢貴方が地位や名誉に拘りが有るなんて知りませんでしたね。｣
ドストエフスキーは少し笑い、立ち上がった。
｢ここは僕が。また何処かでお会いできるのを楽しみにしていますよ。その時は是非、僕と共に。｣
自分よりもずっと小さな彼女の手を取り、その手の甲に
残された彼女は、残りの紅茶を優雅に楽しんでいる。暫くして、ドストエフスキーの座っていた椅子に、誰かが座った。
｢密会は終わりかい。｣
｢えぇ、恙無く。｣
｢それは何より。外を楽しめているようで私も安心したよ。｣
目の前に座ったのは太宰だ。優雅に紅茶を飲む彼女を見詰めて、静かに微笑んでいる。
｢君のお陰で仕事はサボれたけど、調査員が総出で君を探すことになった。敦くんは鏡花ちゃんとナオミちゃんに絞られてたよ。Aと何があったんだってね。｣
｢それは気の毒だね。早く帰ろうか。ここのお代は貧弱な露西亜の紳士が払ってくれたみたいだし。｣
少し紅茶を残して、彼女は太宰と共に店を出た。店を出て暫く、路地裏に差し掛かった時、彼女達を何者かが取り囲んだ。
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作者名：花蛸花
| 作成日時：2022年3月31日 8時
