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静かな喫茶処のテラス席。露西亜帽を被った、色白の男が優雅に紅茶を嗜んでいる。そこに、黒い
｢相席、よろしいかしら。魔人、フョードル・ドストエフスキーさん。｣
露西亜人の男＿＿＿フョードル・ドストエフスキー＿＿＿は、少し目を見開いて顔を上げる。そこには、にこりと口元だけをあげた笑みを浮かべるAの姿があった。
｢お久しぶりだね、ドストエフスキーさん。｣
｢……えぇ、そうですね。相席、構いませんよ。｣
｢それはどうも。｣
彼女は山高帽を外し、テーブルの端に置くと、静かに座った。店員に紅茶を注文して暫く、彼女は口を開いた。
｢神無月雅彦に私の情報を売ったのは君だね。｣
｢なんの事でしょうねぇ。｣
｢惚けるなよ。｣
頬杖をつき、いつも通りの鈴の音のような可愛らしい声でそう言った。ドストエフスキーは小さく笑うと、｢お見通しですか｣と呟いた。
｢今度こそ貴方を手に入れる絶好の
｢ありがたい限りだと思うよ。｣
｢お待たせ致しました｣と、店員が紅茶を運んでくると｢どうもありがとう｣と微笑み、それを一口飲む。
｢これ、お返しするよ。｣
そう言って彼女が差し出したUSB。それを見て、ドストエフスキーは目を見開いたあと、小さく笑った。
｢起爆装置を作動させた時、可笑しいほどに簡単すぎて調べてみたら、不自然なデータが残っていたからね。君がこのウイルスをばら撒いておいてくれたお陰でスムーズに起爆装置を作動させることが出来た。｣
｢ふふふ……まさか見つかるとは思いませんでしたよ。矢張り、貴方は素晴らしい。｣
｢褒められているのにこんなにも嬉しくないのは初めてだよ。おめでとう、私の初めてを受け取れたことを存分に喜びな。｣
｢それは光栄です。｣
二人は、互いに微笑みあった。然しその笑みには恐ろしい何かが潜んでいた。笑っているはずなのに、目はちっとも笑っていない。
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作者名：花蛸花
| 作成日時：2022年3月31日 8時
