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言ってしまえば、彼女は本当に何もしていないのだ。何もしていない、というのは少し語弊がある。実際中島を眠らせて探偵社を抜け出したのだから何かしたのは当然だ。
中島が様子を見に来ることは知っていたので、さっさと抜け出してしまおうと準備をしていたのだが、準備も終わって、さぁ行こうかとしていたところに、中島が入ってきたのだ。おっとまずい。それと同時に、中島の腕を掴んで寝台の上に思わず押し倒してしまったのだが、そこで中島があまりにも照れるものだから面白くて仕方なかったらしい。然しそこで遊んでる暇もないので、万が一のために用意しておいた睡眠薬を打ち込んだのだ。
｢余りにも簡単に行き過ぎて私は吃驚しましたけどね。｣
｢じゃあ、何もねぇんだな？｣
｢何も無いよ。あると思う？｣
｢いや思わねぇ。お前相手じゃ絶対にねぇ。あったとしても人虎相手なら自分でなんとかすんだろ。｣
｢そもそも敦くんが自ら女の子に手を出そうなんてしないかもね。｣
｢そう思うなら離してください！！！｣
未だに両腕を掴まれて、まるで逃がさないと言った様子の二人に中島は半泣き状態だ。｢ああごめんごめん｣と言う太宰の言葉の後に、二人同時に中島の腕を離してやる。
｢敦、お前油断しすぎだぞ。｣
｢面目ないです………｣
｢ったく……うちにいたら部下を脅して逃げ出すからってここに置いてんのに、結局逃げ出しちまったら意味ねぇじゃねぇか。｣
｢そもそも私、脅した覚えないのだけど。｣
｢いつも脅してるじゃないか……｣
｢脅してないわよ！お話しただけ！｣
｢先生のお話ってそれ拷問でしょ。｣
ルイスはケラケラと笑った。中原は小さく息を吐き、帽子を被り直す。
｢兎も角、うちにいても探偵社にいても変わんねぇならこいつは連れて帰んぞ。｣
｢えぇ〜！！私まだAとお話していたいですわ！｣
｢私だってAと一緒にい〜た〜い〜！中也、おーねがい♡｣
｢気色悪ぃな手前。こいつは仮にもポートマフィアだ。いつまでも探偵社に療養入院なんて示しがつかねぇんだよ。Aもそれでいいな。｣
｢別になんでもいいよ。｣
｢嫌です〜！！｣とAに抱きつくナオミに、谷崎は困り顔、太宰は｢狡い！｣と駄々を捏ねている。中原の胃は痛くなり、横光は苦笑、ルイスはへらへらと笑っていた。
そんな中で、やはりAだけがいつも通り冷静で｢はいはい｣と彼らを適当に遇っていた。
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作者名：花蛸花
| 作成日時：2022年3月31日 8時
