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ある日気づいた。これは全て言い訳なのだと。怖かったんだ。彼女は裏社会で育ったようなもの。ポートマフィアには彼女の居場所があった。裏社会を抜けたとして、必ずしも居場所が見つかるとも限らない。しかし、一番はもし彼女に拒まれたらということだった。癪ではあるが中原を初めとした幹部にも、首領である森にも可愛がられていた。仲間を、友人を、全てを捨てるか、自分を取るかなんて選択を、幼い彼女にさせる勇気が太宰にはなかったのだ。
あの日、中原にも言われた。マフィアに囚われの身となってしまったあの時だ。彼は言った、「何故あいつを置いていったんだ」と。
彼女のことを聞く権利は、きっと自分にはないのだろう。だから太宰は、あの時敢えて何も聞かなかったのだ。
「………この人………」
「鏡花ちゃん、知ってるの?」
「知ってる。この人は、ポートマフィアの準幹部。……すごく恐ろしい人。」
恐ろしい人。彼女は確かにそう言った。しかし、太宰はさっきこう言った。心優しく、素直な子だと。
「準幹部ね。……鏡花ちゃん、君から見た彼女はどんな存在だった?」
「……優しい人だった。でも誰よりも冷酷で、黒の世界にふさわしい人で……いつも笑顔で何を考えているのか分からない。たまに見せる狂気的な笑みも、残忍さも……全てが恐ろしかった。」
「なるほど。………4年という月日は、人を変えてしまうには十分すぎるみたいだ。」
何ひとつとして想像のつかない事だった。残忍?冷酷?そんなはずが無い。彼女はいつも無邪気に笑って、銃だって握れたけど殺しをやらせた事はなかった。黒い世界にふさわしい人間だなんて、一度も思ったことがない。
しかし、4年。その年月は彼女をすっかり変えてしまったらしい。準幹部なんて高い地位に着いてしまったらしい。まるで昔の自分の話を聞いているみたいで耳が痛かった。
「……でも、おかしい。」
「なにが……?」
「あの人の名前、……確か、森Aだった気がする。」
「……森か……あぁ、やっぱりそうか。」
____あの子は私を、恨んでいるんだ。
太宰という名を捨て、首領である森から名前を拝借しているというわけだ。いや、もしかしたらもう正式に養子になっているのかもしれない。何も話さなくてもきっと分かってくれるなんて、信じていてくれるなんて、考えていた自分が憎くて仕方ない。
でも、もう一度会いたいなんて、家族に戻りたいなんて、虫が良すぎるだろうか。
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あっきーばか(プロフ) - 初コメ失礼します。志賀くんタイプで性癖です。嫁にください。この作品の推し志賀くんになりました!読んでいてとても面白い作品をありがとうございます‼️更新頑張ってくだせぇ (2022年3月27日 10時) (レス) @page20 id: 43feeb5241 (このIDを非表示/違反報告)
Sena(プロフ) - 妹系大好きです!太宰さんとすれ違っている感じの夢主ちゃん、気持ちわかる…!!別小説なんですが、おっかな妹とかすっごく好きで!!現在は更新停止になっているようですが、また再開するのを楽しみにしています!!あと!反社とJKも大好きです!応援してます!!! (2022年2月10日 18時) (レス) id: 61121e16fc (このIDを非表示/違反報告)
にゃーちゃん - 初コメ失礼します!夢主ちゃんかっくいいぃぃぃぃぃぃい!もはやこの作品での推し夢主ちゃんかもしれない、、、←更新楽しみにしてます! (2022年2月10日 2時) (レス) @page46 id: eaf6e1fdb7 (このIDを非表示/違反報告)
おひな(プロフ) - 花蛸花さんが文スト作品を書いてくれるなんて思ってもいませんでした!しかも太宰さん!嬉しいです!!😭✨更新頑張ってください!!! (2022年2月2日 11時) (レス) id: fb3fd917e6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花蛸花 | 作成日時:2022年2月2日 2時