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警察庁の長官に上り詰める為に手を汚してきたこと、人を騙し人を蹴落とし、あることない事あたかも事実だったかのように証拠をでっち上げて上司を引きずり下ろしたこと。そしてそれが息子にバレて、父親を何とかしようと証拠を集めていた正和が邪魔になり、部下を使って殺したこと。
「あいつもバカだったよなぁ……大人しくしてりゃァそのうち長官の座も譲ってやったのによォ〜…」
体を起こしたかと思うと、ゲラゲラと声を上げて笑いだした父親に、殺意を覚えた。
そんな事のために善良な兄を殺したのか。今までさんざん、クズで碌でもない父親だと思っていたが、まさかここまでとは思わなかった。腕にできた痣を抑えるように、服の上から強く握りしめる。
「おまえは殺してやらねぇから安心しろよ、ありがたく思えよなぁ〜……」
ニタニタと笑うその顔。気持ち悪い。ぎりぎりと奥歯をかみ締めて、Aは二階にある自室に向かった。どすどすと響く足音に、レオは飛び起きてしまう。少し唸ったかと思うと、その足音の正体が彼女だと分かり唸るのをやめた。部屋に入ってきた彼女は、いつもと違った。それは犬であるレオにも分かった。
しかし、彼女はレオの方に見向きもせずにクローゼットを開けた。その一番奥にある、少し大きめの縦長の箱。その箱の蓋を開けば、その中には短刀が入っていた。それは母親が使っていた短刀だ。彼女の母親は武道家の娘で、彼女が剣道や居合術などを得意としているのは、母親の影響もあった。刀の登録証もちゃんとある、法律的にもちゃんとした本物の刀だ。
母親が死んだ後、兄とふたりで父親を説得して何とか自分の手元に置くことが出来たその刀。手入れも欠かさないし、時々これを見ては幼い頃の母のことを思い出す。
それを手に持ち、ふらふらとした足取りでリビングへと降りる。父親は再びボトルに手を伸ばし、呑気にグラスに酒を注いでいた。
「おい、酌くらいしろよ、気の効かねぇガキだな。」
そう言って、父親はまた酒を呷る。鋭い金属音もともに、その短刀を鞘から抜いた。この男だけは絶対に許してはならない。手は震えることすらしなくて、これからその男を殺してやろうとしているのに心は恐怖すら感じていなかった。殺るなら今だ。Aは刀を握りしめ、父親に向けて大きく振りかぶった。
気づいた時には、手は真っ赤に染まり、目の前の父親の右肩には短刀が刺さっていた。父親は、はもがきながら呻き声をあげている。
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鈴(プロフ) - 続編おめでとうございます!! (2021年10月30日 10時) (レス) @page10 id: df5b843723 (このIDを非表示/違反報告)
りく - 文章の構成などもお上手で先が読みたくなってしまいました。応援しています! (2021年10月20日 14時) (レス) @page22 id: cb6ced8fcf (このIDを非表示/違反報告)
五条悟(プロフ) - なんかこのまま嬉々として蘭ちゃんが梵天に笑顔で入れそうだな。レオ君と共に (2021年10月16日 6時) (レス) @page4 id: e4f8a98264 (このIDを非表示/違反報告)
ゆぽぽ(プロフ) - 続編おめでとうございます!!!!これからも更新頑張って下さい(^^) (2021年10月16日 4時) (レス) @page4 id: 908e4168b8 (このIDを非表示/違反報告)
紅華(プロフ) - 続編おめでとうございます!これからも楽しく読ませていただきます! (2021年10月16日 2時) (レス) @page2 id: 530da25b74 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花蛸花 | 作成日時:2021年10月16日 2時