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幹部の彼らは、彼女の話をただ静かに聞いているだけだった。彼女の頬に涙が伝うと、明司はそれを優しく拭う。
「……今日までよく耐えたな。よく頑張った。」
「…っ、でも、……」
「……………俺らに迷惑かけたと思ってんなら、それは違ぇよ。俺たちはやりたくてお前に力をかしてやった。普通なら放ったらかしてる。」
明司は、Aが自分たちの正体を知っているていで話を進めた。彼女が自分たちの正体を知っているのはほぼ確定と言えるだろう。
「……お前は、俺たちが反社だって知ってたのか?」
「…………ん、」
「……いつからだ。」
それは、随分と最近の事だった。九井と再開した一週間ほどあとのこと。その日、父親のカバンをひっくり返してしまい、バレる前に早く片そうと散らばった資料に手を伸ばした。その時目に付いたのが、"梵天"と書かれた薄い資料。犯罪組織の詳細記録の資料にしては随分と薄いそれ。その表紙には、どこかで見た事のあるようなマークがあった。
蘭、そして竜胆の首元にある刺青。あれによく似ていたのだ。まさか、と思いながらページをめくると、次々に出てくる見知った名前。まさかとは思ったものの、佐野と九井、三途と明司が突然姿を消したことへの辻褄は合う。彼女は梵天という名前自体は知っていたものの、一般人である彼女が詳しくその実態を知るなんてことは不可能だった。だからこそその日、その時まで彼らがまさか犯罪組織の人間だなんて思ってもいなかった。いや、疑うべき場面は沢山あっただろうに、と過去の自分を振り返る。
しかし、もし自分が反社だと知っていることを彼らに知られたら、殺されてしまうのだろうか。それとも、もう二度と会えなくなってしまうのだろうか。いや、それよりも父親から彼らの存在を守るのが優先的だ。大切な人が消えるなんて、もう二度とごめんだ。
父親が大きな動きをできないように、詳しい情報が警察内部に回ってしまわないように、一通り目を通したあと、重要そうなページだけを抜き取った。彼女は父が寝静まった頃に、父の灰皿にその資料を沈めて火をつけた。何事も無かったかのようにそれを片付け、ページが足りないと暴れる父親からの暴力に耐え抜いた。
Aはその資料を見なかったことにして、いつも通り、何食わぬ顔でいつもの公園へと通っていた。
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鈴(プロフ) - 続編おめでとうございます!! (2021年10月30日 10時) (レス) @page10 id: df5b843723 (このIDを非表示/違反報告)
りく - 文章の構成などもお上手で先が読みたくなってしまいました。応援しています! (2021年10月20日 14時) (レス) @page22 id: cb6ced8fcf (このIDを非表示/違反報告)
五条悟(プロフ) - なんかこのまま嬉々として蘭ちゃんが梵天に笑顔で入れそうだな。レオ君と共に (2021年10月16日 6時) (レス) @page4 id: e4f8a98264 (このIDを非表示/違反報告)
ゆぽぽ(プロフ) - 続編おめでとうございます!!!!これからも更新頑張って下さい(^^) (2021年10月16日 4時) (レス) @page4 id: 908e4168b8 (このIDを非表示/違反報告)
紅華(プロフ) - 続編おめでとうございます!これからも楽しく読ませていただきます! (2021年10月16日 2時) (レス) @page2 id: 530da25b74 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花蛸花 | 作成日時:2021年10月16日 2時