闇医者-2【東リべ】 (ページ32)

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勉強会、と言っていいのか分からないその集まりで、Aは二人に勉強を教えた。要領が悪いというか単純に馬鹿というか、二人はうんうんと唸って頭を捻っている。

｢ここにはこの数式ってさっきも教えたろ？これにこの数字を当て嵌めて……｣

｢なるほど！！！で、こうっすか？｣

｢そう。｣

｢A〜これってこっち？｣

｢違う。こっちな。｣

｢あ、こっちか〜｣と、再びノートに向き直る真一郎に小さくため息をつく。

｢二人とも馬鹿なんだな。｣

｢あ"ぁ"！？｣

｢まぁまぁ、伊宮。事実だろ？｣

｢ハルは賢いから、もうかけ算6の段まで言えるもんな〜｣

Aが優しく頭を撫でてやれば、春千夜はえっへんと胸を張った。Aは春千夜にそれなりの教育をしているようで、宿題はちゃんとさせるし、分からないところがあれば分かるまできちんと向き合う。

医者よりも教師の方が向いているんじゃないかと思うほどその説明は分かりやすく、最初は唸っていた春千夜も直ぐに理解できるようになる。

｢伊宮、看護師になんの？｣

｢おう！今に見てろ、Aさんの優秀な右腕看護師になってやっからな！｣

｢期待はしてない。｣

｢ほんっっっっっとお前可愛くねぇな！？！？｣

子供の言うことを真に受ける伊宮に呆れつつも、Aは二人の頭を小突いた。

｢喧嘩すんな。勉強しろ勉強を。終わったらホットケーキ焼いてやるから頑張れよ。｣

｢ふわっふわのやつ！｣

｢はいはい。｣

俄然やる気が出ました、といった様子の春千夜の頭を撫でれば、彼はまたドリルのページを捲った。

｢春千夜は偉いな〜マンジローにも見習ってほしいわ。｣

｢兄貴がやらなきゃ弟もやる気になんねーだろ。おら、やれ。お前ら全員終わらねぇと連帯責任で全員ホットケーキなし。｣

Aが腕で大きくバツ印を作ると、真一郎と伊宮も慌てて参考書や教科書に向き合った。特別甘いものが好きなわけではない二人だが、こうして素直に勉強をしてくれるのだから可愛らしい。

そろそろと終わるだろう、という頃にAは立ち上がると、キッチンでエプロンをかけた。

｢出来上がるまでに終わらせとけよ〜｣

リビングで熱心に勉強をする彼らに声をかけると、小さく笑った。