闇医者-2【東リべ】 (ページ1)

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物心着いた頃には必要不可欠な存在になっていた。佐野真一郎。Aの幼馴染だ。

｢真一郎！！早くしろ！遅れんぞ！｣

｢待てよA！！｣

｢だから昨日のうちに準備しとけっつったろうが！！｣

今になって慌てて準備をする真一郎に、Aはため息をついた。毎朝彼を迎えに来るのはAの仕事で、朝の弱い彼の世話をして髪を梳かしてやるのも彼の仕事だ。

彼の母親は救いようのないクズだった。父親の事は知らない。産まれる前に愛人だった母親を捨てて姿をくらましたらしい。そんな母親はろくな子育てをせず、その当時はすぐ近所に住んでいた真一郎の祖父がそんな彼を気遣ってよく家に呼んでは一緒に食卓を囲んでいた。家が変わったあともその仲は変わらずだった。

そこで出会ったのが真一郎で、今となっては一番の親友だ。

｢A、おはよ……｣

｢よぉ、万次郎。おはよ〜お前朝からすげぇ頭してんなぁ？｣

Aはけたけたと笑いながら彼の頭をわしゃわしゃと撫でる。彼の弟と言うだけあって随分と朝に弱い。

｢ったく……おら、制服の襟曲ってんぞ。｣

｢お、ありがとな！｣

｢少しはしっかりしろばか。｣

｢馬鹿じゃねぇし！？！？｣

｢うるせぇんだよ声が。おら、早く行くぞ。遅刻だ。｣

｢不良のくせにそういうとこ気にすんのな。｣

｢俺はちゃんとした大学に行きてーもん。｣

中学の頃から歳を誤魔化して始めたバイト。そして父親が母親に養育費として渡した膨大な額の金。それを母親が無駄遣いしないようにと隠したのはまだ幼い頃だった。

有名な大学に行って医者になる。それは彼の夢だった。

｢じゃ、いってきまーす！｣

｢さっさと乗れ。｣

カバンをカゴに入れて、自転車の後ろに真一郎が乗ったのを確認したあとペダルを漕ぐ。

｢そーいや、今度ババアが帰ってくるらしいんだよ。｣

｢おふくろさんが？なんでまたいきなり。｣

｢しらね。金がねぇから貸せってせびられたら俺ぶん殴ってやる自信しかねぇわ。｣

｢女に手出すなよ！？｣

｢わぁってるわァ！！！耳元で騒ぐな耳元で！！！｣

ったくお前はほんとに……！彼はそう言いながらも、一生懸命ペダルを漕いだ。