・34 ページ34
「ほら、ちゃんと歩けよ。」
「A〜……いくなよぉ〜……」
「無茶言うな……」
酒にめっぽう弱い幸慶を支えて寮まで歩く。弱いくせにAと同じペースで飲もうとする実兄に実幸もため息をついた。
「ごめんねA……真希ちゃん待たせてるのに……」
「いや、いいよ。」
「A、あと僕がやっとくから真希ちゃんのところ行ってきたら?」
「雅火、酔っ払ったこいつを抱えて歩けるの?足フラッフラでほとんど全体重かけられてるのに?」
「……やっぱお願いします。」
雅火はもちろん男なのだからそれなりに力はある。しかし、筋肉質の幸慶を抱えて歩くほどの筋力はない。体重をかけられたら重すぎて押しつぶされてしまうだろう。
夏油は学習能力が無いのかその場の雰囲気なのかまたも泥酔していた。あれでは明日もまた二日酔いコース。そんな父を五条に預けて、姉二人は釘崎に任せた。
虎杖と狗巻も酒が回ってそのままダウン。伏黒の意見で重たくて運びたくないということになり、眠ってしまった数人は談話室で雑魚寝をさせることになった。
「ほら水。」
「ん……」
「こりゃ明日は二日酔い確定だね……」
「この前も二日酔いになったばっかりなのに……」
「そろそろ学習して欲しいものだね。実幸、あと頼めるか?」
「うん、ありがとう。」
「じゃあ私はこれで。雅火も今日はありがとう。」
「こちらこそ。」
Aはおやすみ、と二人に一言いったあと部屋を出て寮を出る。真希と約束した場所。校舎裏の古びたベンチに腰掛けた真希に、Aはそっと声をかける。
「真希ちゃん。」
「……やっと来たか。」
「すまないね、待たせてしまって。寒くはないかい?6月の後半と言ってもまだ夜は冷える。」
「なんてことねーよ。酒のおかげでぽかぽかしてるくらいだ。」
「それなら良かった。」
真希は天与呪縛の影響からなのか、さほど酔わない。ほとんど素面状態の真希の隣に座る。
「タバコ、吸わなくていいのか?」
「真希ちゃんの身体まで悪くするからね。それとも、吸ってほしい?」
「しばらく見納めだからな。」
じゃあ遠慮なく、とAは制服のポケットからタバコの箱を取り出す。タバコをくわえて、シルバーに龍の柄が着いたジッポで火をつける。煙を肺に吸い込み、その煙をゆっくりと吐いた。
その一連の流れも、もう暫くは見納めになる。
1742人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆーりん - 泣きそうになったのは仕方のないことです!辛い!! (2022年11月20日 2時) (レス) @page35 id: 63a2588af8 (このIDを非表示/違反報告)
魔朝@Bsc(プロフ) - おっと目から水が......(´: ω :`) (2021年6月26日 21時) (レス) id: 9bfc59222b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:花蛸花 | 作成日時:2021年6月25日 2時