前髪と息子-5【呪術廻戦】 (ページ30)

今日:6 hit、昨日:6 hit、合計:98,473 hit

・30 ページ30

｢最近、あいつ忙しそうだな。｣

｢あいつ？｣

｢雅火だよ。｣

Aの自室で彼の荷造りを手伝いながらそんな話をする。雅火と二人で話をして以来、雅火は何やら忙しない。

｢あぁ、ちょっと頼み事をしたんだ。｣

｢頼み事……？｣

｢ちょっとした金儲けだよ。自営業でもなんでもいいからやってみたいと思ってね。｣

｢自営業……！？お前が！？｣

｢そう。どうせ海外にいくんだから、支援してくれそうな仲間を探すのもいいかと思ってね。｣

一級の給料はそれこそ良い値が入る。そもそも、彼は近いうちに特級になるとされているわけだから、お金の心配なんてする必要がないだろう。

｢なんで急に。｣

｢世界には不幸な子供が沢山いるからね。天狐さんのところも、最近非術師の子供の受け入れを考えてるらしいんだ。もちろん、呪術を扱える子供とは別の施設で、だけど。それの支えになれればと思った結果だよ。｣

｢なるほどな…まぁ、お前頭いいしな。いいんじゃねぇの。で、何するんだよ。なんか会社でも建てんの？｣

｢まだ決めてないよ。これから先はまだ長いからゆっくり決めていくつもり。だから幸慶達にもまだ話してない。こういう話は雅火の方がよく動いてくれるからね。｣

昔から雅火はAのサポート役だった。頭が良く勘がいい。Aには劣れど、その頭脳は彼を支えるのには十分すぎるものだった。

｢お前人を丸め込むの上手いから何やっても上手くいきそうだな。｣

｢それ褒めてる？｣

｢褒めてる。｣

｢絶対褒めてないな……｣

｢ま、何をやるにも私は反対しねーよ。私はただ待ってるだけだからな。｣

そう言いながら、彼の荷物に詰めるシャツを綺麗に畳んでいく。あぁ、待っててくれるのか。と、嬉しくなったAは彼女に抱きついた。

｢ちょ…！今畳んでんだろ！！｣

｢……すき。｣

｢……なんだよ今更。知ってんだよそんなこと。｣

｢……ね、真希ちゃん。｣

｢……なに。｣

｢……帰ってきたら、結婚しようか。｣

彼のその言葉に目を見開いたが、真希は直ぐに笑みを浮かべた。

｢んなもん元からそのつもりだっての。｣

｢待っててくれる？｣

｢さっきも言ったろ待つって。何年経ってもいい。お前が納得するまで行ってこい。私は気長に嫁に行く日を待っててやるから。｣

｢……今日泊まってく？｣

｢元々その予定。｣

そう言った彼女に、やっぱり敵わないななんて小さく笑みを浮かべた。