前髪と息子-5【呪術廻戦】 (ページ11)

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謹慎部屋には一日に最低四回は高専職員が彼の様子を見に行くことになっている。そのうち三回は食事、残りの一回は課題を持ってくる訳だが、彼の場合暇さえあれば顔を見に来る教員が多いため四回なんかじゃ済まないわけだ。

｢A～元気にしてるかい？｣

｢元気だよ。｣

そう言いながら、Aは机に向かって課題をしていた。ベット、棚、机、お風呂、トイレ、冷蔵庫のみのその部屋。本当に必要最低限の生活のみが許されるわけだ。

夏油は机に向かうAの背を眺めながらベットに座った。

｢とうとう3年生だね。｣

｢あぁ、そうだね。今年は一年が入って来ないみたいで残念だ。｣

｢まぁ、仕方ないよ。入学生のいない年があるなんてよくあることだからね。実幸も心配してたよ。連絡くらい返してやりな？｣

｢いいんだよ。私も少し頭の中を整理したいからね。今誰かと連絡をとったらダメなんだ。｣

｢どうして？｣

｢……身内を理由にして逃げたくないからね。術師を続けるか否か。ちゃんと考えるべきだと思うんだ。｣

非術師を嫌う自分と、守りたいと思う自分。今彼はその二つの感情の板挟みになっていた。

｢………あまりちゃんと食事をとっていないそうだけど、それが原因か？少し痩せたようにも見えるよ。｣

｢………そうかもしれない。あまり食欲が湧かないんだ。…大丈夫だよ、術師を続けることになってもいいように筋トレはしてるから。｣

｢そういうことを言ってるんじゃない。お前の体を心配してるんだ。｣

｢……………大丈夫だよ。少なくとも今は元気だし。｣

｢………他に、変わったことは？｣

｢………あまりよく眠れないくらいかな。｣

｢…………明日、硝子を連れてくる。｣

そう言って夏油は立ち上がると、その部屋を出る。南京錠をかけて、ｼﾞｬﾗｼﾞｬﾗと音を立てて鎖をまきつけその上から更に南京錠をかける。正直いってこんなもの無駄なわけだ。夏油Aにとってこんなものお飾りにしかすぎない。

｢…………｣

夏油は小さく息を吐いたあと、静かにその場を離れた。