あの角のいつもの場所に２ (ページ37)

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そんなもの、できるわけもなく。
私は、歩夢に返事もしないまま日々を過ごしていた。

誰からも許してはもらえない結婚など、無意味。
そして、私と一緒になったら最後。きっと地獄をみるんだよ。

そう言ったら歩夢は、高笑いをして

「今よりはもっと幸せになれるよ？俺はな」

などと言い切った。

本当に、何を考えているのかわからない。

私は今、リビングの小さなテーブルに鎮座する婚姻届という一枚の紙をずっと眺めていた。
そこには丁寧に歩夢の名前が書かれていて、ハンコまで押されていた。

「破っても無駄やで？あと１０枚あるからな」

だから私はその場でそれを破いた。

すると歩夢は、まいどー。と言い、同じ紙を目の前に再び広げたのだった。

「……暇なの？小説家って」

「んなわけあるかー、大忙しや！」

もう一度破り捨てる訳にもいかずに、私は仕方なくその紙を手に取り眺めた。

「間違えてもええで。書き直せるように後３枚追加してあるからな」

「てことは、合計１３枚用意してたって事？
暇だね」

手元の束になった紙を見て、大きなため息をついた。

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