第五十話 ページ9
組合との激戦を終え、ダラけていた乱歩は重役出勤をし何時もよりも大分遅れて探偵社に顔を出した。普段はAと出勤をするがたまにこうして別々に出勤をする。
別々に出勤をした場合普段なら乱歩が姿を表すと飼い主を見つけた犬のように側に行くのに今日は来ない。
「?…国木田、Aは?」
「一緒ではなかったのですか?今日はまだ出勤していませんが」
今日、Aは何時もより早く家を出たのにも関わらずまだ出勤をしてないのはあり得ない。
ましてや自分より遅くに出勤なんて考えられない。
「不味いな…」
「乱歩さん?」
「国木田、うずまきに行く」
「え、はい…」
国木田を連れて一階にあるうずまきへ行くと出勤前の太宰が机に突っ伏していた。
「貴様‼来ないと思ったらこんなトコに‼」
「この前まで頑張ったから疲れたのだよ〜」
云い合いをする二人をよそに乱歩は店長に歩み寄る。
「店長、今日Aが来たよね?」
「えぇ…早朝にいらっしゃいました。依頼人の方々を探偵社にお連れになりましたが…」
「残念だけどまだ出勤すらしてないんだよ」
「⁉」
店長の反応からするにAが来たことは間違いなく、可笑しな様子すらなかったのだろう。
「Aがこの店を出た後何か外で変わった事は?何時もと違う事ならどんな事でもいい」
「何時もと…そういえば、Aさん達が出て行かれた後、暫くして外を掃きに行くと其処に飾ってある花が一輪だけ落ちていました。状態も良く綺麗だったので拾って飾ったんですよ」
「…この花、エボルブルスか。店長、有難う!太宰、国木田。緊急事態だ急いで社長に連絡して」
乱歩の雰囲気から重大さを感じ取った二人はすぐさま気持ちを切り替えうずまきを後にする。
探偵社に集められた全社員の前に乱歩が何時もの幼い表情を見せず、鋭い表情でただ一言。
「Aが攫われた」
「そんな‼いったい誰に⁉」
「エボルブルスだ」
「エボル…ブルス?何ですかそれ」
「同業者だね…といってもうちみたいに荒事ではなく人捜し専門の探偵社だ。組織の
「人捜し…という事は誰かが依頼しその依頼の遂行の為に連れ去ったって事ですか⁉」
「いや、彼らは人攫いではなく探偵だ。恐らく…」
「エボルブルス自身がAを捜してたんだろうね」
何のためにかはまだ判らないが…
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作成日時:2020年1月4日 10時