第六十七話 ページ27
皆から聞いた孤児院の話はまぁ酷かった。
孤児達には得点が与えられ、得点が低ければ食事もろくにもらえない。かといって得点が高くとも待遇が良いわけではなく、まだマシ。それが現実だった。
私は得点が低かったらしい、よく監 禁されて其れを助けに来た礼朗もつられて得点は低くなった。他の三人は得点が高くて分け与えられる少量の食事を私達に分けてくれてたらしい。
敦君は私よりも酷かったみたいで、それなら写真を見ただけでのあんな反応は頷ける。
『でも、出てから不器用が過ぎる人って思うようになったんだよね』
「彼の人も同じだったんだよ。否、彼の人の方が境遇が酷かった。俺らのなんか彼の人が過ごした時間に比べれば楽園だったよ」
「そんな環境でしか過ごしてない人にしたら真っ当に私達を育てたもんよ」
「だな。砂姫や敦の件も、今なら納得がいくしな」
『如何して?』
「異能だよ。さぁちゃんはよく暴走させて二人になったり男になったりしてたんだよ。其れを隠したかったんだろうね。マッシュが隔離してたから私達以外の孤児達はさぁちゃんの異能知らなかったしそれどころかマッシュ以外の大人も知らなかったよ。敦君は虎でしょ?虎は最悪暴れられたら私達から死人が出かねないし」
『…守るためって事?』
「多分ね。死人に口無し。予測しかできないけど…もし院長がその記事を見て来たんだったら敦君だけじゃなくてさっちゃんにも会いに来たかもよ」
『え?』
「ほらここ見て。敦君の後方に少し見切れてるけどさっちゃんも写ってる」
「本当だぁ‼」
『これくらいなら気づかないよ。それに私は十五年も前に捨てられたんだし…。そんな前に捨てた奴を普通覚えてないよ』
「捨てられた?」
「何云ってんだ?お前は自分から出て行ったんだろ?だから俺らもお前を追いかけて…何年も経ったけど自分らで外に出て行ったんだぜ?」
『違う‼私が礼朗置いて一人で出るなんて…だって私は捨てられ…いや…違う…埋められて…』
「は⁉」
そうだ…私はあの日…
『思い出した…私、あの日の夜初めて彼の人の前で死んじゃったんだ…。…上手く身体に戻れないまま…私の死体が埋められて…それで…埋まり切る前に院長が別の大人に呼ばれて離れた時に…生き返ってそのまま逃げたの。あの時自分が死んでる自覚がなかったから…このままじゃ生き埋めにされると思って…』
アレは私を殺す為じゃなくて埋葬しようとしてたんだ…。
私は捨てられてなんかなかった。
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作成日時:2020年1月4日 10時