第五十四話 ページ13
乱歩の云うことにまず間違いがない。其れを判っていても敦はまだ信じたくはなく、云い訳を探すが見つからない。
「敦君 Aちゃんを攫ったから悪って考えなくてもいい。向こうからすれば私達が悪なのだから」
「それって…」
「彼等からしたら私達探偵社は友人や妹を記憶のない事をいい事に連れ去った誘拐犯だ。しかも此処は武装探偵社、この前まで組合とやりあってた危険な場所だ」
同じ状況でも視点が違えば見えてる物が違う。マフィアや組合と違い今回は此方に明確とした殺意がなく、彼方からしたら取られたものを取り返しただけに過ぎない。故に、取り返しに成功したからか一切此方に行動を仕掛けてこない。
「だが、此方はAを易々と渡すつもりは無い、話し合いで済むなら結構。しかし、向こうがそうで無いなら…やむ終えない、多少手荒になろうとAを奪還する」
社長。福沢の声に一同立ち上がる。
敦だけが浮かない顔のまま作戦が遂行される事になった。
国木田が谷崎の情報の元、エボルブルスとの接触を試みる間確実、交渉が失敗した時の為の準備に取り掛かる。
「そう云えば乱歩さん」
「何？」
「如何して礼朗がAさんが兄妹なら尚更可能性が高いんですか？別に兄妹じゃなくても別の関係性でもあり得ますし…他の構成員じゃなくて礼朗を限定するのも判りません」
谷崎が乱歩に疑問をぶつけると乱歩は溜息をつき説明をする。
「他の構成員が兄妹だった場合、今回の行動は荒すぎる。もっと慎重に事を運ぶ方がこんなにも早く僕らに見つかりはしなかっただろう。ただ、礼朗はエボルブルスの長でAの兄妹だった場合、今回の荒さも納得ができる」
「どうゆう…」
「特殊な環境下で育つと血縁者の性格が似ることはたまにある。双子なら尚更だ」
「済みません、まだ理解が…」
「依存者なんだ」
「依存者？」
「そう。Aは依存者だ、誰かに依存していなければ自分を肯定し生きることができない。だから今は僕に依存させている。僕の前はマフィアの素敵帽子君。なら、その前は？A自身に記憶は無いが恐らくあの礼朗で間違いはない。Aと同じく礼朗が依存者として育ってら、彼は今でもAに依存している事になる。長年離れた妹を見つけたんだ直ぐにでも手元に置きたいだろう？長だから止める者がいなかった」
いつも側に依存者を置いている乱歩だから確信ができる事だった。
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作成日時：2020年1月4日 10時
