あなたのそばに…【文豪ストレイドックス】 (ページ31)

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第二十八話ページ31

『姐さん…？』

「Aか。彼奴は末恐ろしいのぉ…」

『だ、大丈夫？見たところ…異常はなさそうだけど』

太宰さんなら精神的にどうにかしそうだし…

「問題ない…。Aや、ちいとコッチへ来てくれんか？そんな離れられてると流石に寂しい…」

『あ…うん』

「そんなに警戒せずとも…何もせん…」

そもそも出来るはずないしね…。違うんだよ姐さん…私ただ…普通に恥ずかしいだけなんだよ‼
久しぶりすぎてどう接していいか判らないだけで…。

「愛いのう…。お主は昔から…闇に似合わぬと判っておりながら…側に置きたくて判らぬ振りをしていたが…やはり、Aには光が似合うておる…」

『姐さんがそう思うのは…中也さん達が私に殺しをさせなかったからだよ…。一度自分で手を染めた人は殺した結果しか見えないから…過程が酷くても其れに目を向けず光に見えてるだけだよ』

「…そうかもしれんな。じゃが、其れを理解出来るているという事はAが光の人間という証明になる。云われても…理解が出来ん私らとは違う。いや、云うてる事は判っておるが…やはり、一度も手を染めてない主の手は私からしたら触れるのを躊躇うくらいに綺麗じゃ…」

『…そっか。私には姐さん達の手の方が綺麗に見えるよ』

「A…」

私の手も姐さんの手も…本当に光の世界でしか生きたことのない人達には、凄く汚く醜いんだろうけど…私達はお互いに綺麗だと言い合う。本心から。

この綺麗さは闇に堕ちた人達にしか判らない。

「そうじゃ、A。面白い事を教えてやろう」

『面白い事？』

「お主、この間中也に会いに行ったであろう…」

『うん…如何して姐さんが？』

「その日、中也が私に態々云いに来たのじゃ…泥酔してな」

『え⁉迷惑かけてませんでしたか⁉』

何してんだ彼の人⁉酒強くない癖に勢いに任せて飲んだな⁉

「中也の泥酔など何時もの事じゃ…。其れより、その時の中也は泣いておってな」

『泣いて…？え？』

「Aが他人行儀だの、しっかりとした大人になってただの、此方の世界から出れて良かっただのと永遠に云い続けてのぉ…最後は泣きながら笑って寝よったわ。見つかって安心したんじゃろうな」

『自分から辞めろって云ってたくせに…』

「辞めろとは云ったが出て行けとは云ってないからのぉ」

『そうだけど…』

「家は変わっとらんよ。主が帰って来れるようにな」

莫迦だなぁ…本当に。莫迦だよ…兄さんは。