テスト期間の幸福 ページ9
電話の奥の空気がフッと変わる。
「俺、立花のことになると余裕なんてないよ。
何てったってすげぇ強敵がたくさんいるから常に狙われているし、おまけに俺の彼女はド天然で超鈍感だし、苦労してるぜ。」
ムッ。私が天然で鈍感だなんて失礼ね。
それに、強敵ってなんだろう。上杉君を狙ってる子がいるのかなあ。いるんだろうなあ。
「確かにそうだよね。上杉君モテるから常に女の子から注目浴びてるだろうし、大変だね。」
「いや、なんでそうなるんだよ。」
「?」
何か間違えた?上杉君はモテると思ったから言ったんだけど。
溜め息の後に上杉君の声が聞こえる。
「そういうところなんだよな、立花って。鈍いっていうか、鈍感っていうか愚鈍っていうか何というか。」
「それって私のこと貶してるでしょ。」
怒り気味の口調でそう言うと、上杉君は慌てて弁解し始めた。
「いや、貶してるんじゃないよ。そういうところも含めて立花っていうか・・・」
「もういいわよ。悪かったわね、鋭くなくて鈍感で人の気持ちも分からない女で。」
かなり頭に血が上っていたので、ガチャンと電話を置こうとした。
「待てよ。」
静かな口調で上杉君の声が聞こえたから、渋々受話器を再び耳に当てた。
また一つでも気に障ることを言ったら、今度こそ電話を切ってやるんだから。
「貶してるんじゃなくて、そういうところも・・・」
そこで上杉君は黙り込んでしまった。このまま受話器を置いてもよかったんだけど、その言葉の続きが気になるから無言で待っていた。
数十秒待って、やがて捲し上げるような声がした。
「立花のそういうところも好きだって思ったんだよ。悪かったな!じゃな、困ったことがあったらいつでも連絡しろよ!」
それだけ言って一方的に電話は切れた。
何、それ・・・。何それ!好きって言って・・え!
私はしばし赤くなりながら混乱していたけど、テスト勉強中だったことを思い出し、慌ててそおっと部屋に駆け込んだ。
その後のテスト勉強は、いつもの数倍頑張れたとか頑張れなかったとか・・・。
35人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ぬの | 作成日時:2018年5月6日 11時