テスト期間の幸福 ページ8
テスト勉強がひと段落ついたところで大きく伸びをする。
チラッと奈子を盗み見ると幸せそうに寝ていた。
そんな奈子を恨めしく思いながら、音を立てないようリビングに降りて行く。
水を飲んで、時計をみるともうかなりの夜更けだった。
そろそろ寝ようかと廊下に出る。そこで電話に目がいった。
ランプが点滅して、留守電が入っていることを告げている。
こんな時間には留守電なんてほとんどないから、好奇心が疼いて、電話のもとに寄った。
受話器を取り上げ、耳に当てる。
「上杉です。あ、彩さんに用事があってかけました。あ…彩さんに時間があればまたいつでもいいからかけて欲しいって伝えてもらってもいいですか?」
それは、久しぶりに聞く上杉君の声だった。
付き合ったものの、すぐにテストや学校行事、塾など、二人とも忙しくて秀明のときしか会っていない。
寂しいと感じていたけれど、それは仕方がないことだったから我慢してたんだ。
でも、いつでもかけてって言う優しい言葉に負け、私は夜中だけどかけることにした。
何コールかし、電話が繋がる。
『もしもし、上杉です。立花?』
「うん、彩です。留守電聞いたよ。あの、用事って何?」
少し緊張しながらそう聞く。上杉君の声が聞けて、嬉しい気持ちの方が大きかったけど。
『いや、大したことじゃないんだけどさ。数学分かってるかとか勉強しすぎて自分を追い込んでないかとか心配でさ。』
わ、何気に嬉しい。私のこと心配してくれたってだけで胸がキュウッとなる。
「ん、大丈夫だよ。ありがとう。上杉君もテスト期間なのにごめんね。心配してくれてありがと。」
『…っっっ!!』
「??」
どうしたんだろ。そこで、無言が訪れた。口を切ったのは上杉君だった。
『テスト終わったらさ、どっか行かね?』
え、これってデートのお誘いなのかな。嬉しい。
「行き、たいです。」
上杉君と話せるってだけで嬉しいのに、その上デートだなんて。
「そっか、良かった。断られたらどうしようって思ってた。」
そこで二人で軽く笑いを交わす。なんか、上杉君に余裕がないなんて意外だな。心配性?
「それ、杞憂だよ。でも、上杉君にも余裕がないって感じて安心した。」
言ってしまった後に、わって思った。余裕がないなんて、私のただの想像にすぎないのに。
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作者名:ぬの | 作成日時:2018年5月6日 11時