そんな時もあるけど ページ33
「もうっ！和典君なんて知らないんだから！！」
「ちょ、待て、彩！」
和典君の出した手をスルリとかわして、そのまま走る。目的地なんて、あるわけないけど、とにかく走る。
道をまっすぐ進んで、進んで、進んで。時に角を曲がったりして、涙を流しながら走った。
すれ違った人に、視線を向けられても気にならなかった。
それだけ私にとってショックな出来事だった。
事の発端は数日前。いつも通り、歩いて秀明に向かってたんだ。
今日は和典君に会えるかも、って思ってたのに。
角を曲がったところで和典君の姿が見えた。その瞬間、心が弾けそうになったんだけど、私の知らない女の子といるのが見えたんだ。
それがわかった途端、サッと物陰に隠れて身を潜めた。告白されてるのかも、って思ったから。
自分の彼氏が告白されてる所なんて見たくないけど、そのまま去ることはできなかった。
少し間を置いて、あちらを窺う。刹那、私は眩暈がしそうになった。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿二人が抱きしめ合っている。
その事実に耐えかね、その場にしゃがみ込んでしまった。
女の子の走り去る音が聞こえる。ああ、和典君と離れたんだ、と安心した。
「ところで、」
和典君のここまで聞こえる声が聞こえる。
「そこで盗み聞きしてる奴は誰だ。」
ギクッ。さすが和典君。鋭い。バレたからといって、逃げる気にもなれなかった為、ノロノロと立ち上がる。
「誰だ⁉………って、彩⁉」
私は、ショックを受けてしまっていて、顔を上げることができなかった。
「何してんだ、こんなところで。」
「………………………よ。」
「え？」
「それは私の台詞よ。」
苛立っていて、無愛想な声になってしまった。慌てて下を向く。
「なんだよ、そんなのお前には関係ないだろ。」
不機嫌そうな和典君の声に限界を感じ、そのまま背を向け走り出した。
そこで冒頭に戻る。
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作者名：ぬの | 作成日時：2018年5月6日 11時
