薄紅色の想いにのせて ページ16
私ばっかりが好きなんだ。
もうそう思ってしまったら、そうとしか思えなかった。
だって、上杉君はとてもカッコよくて理知的で運動もできるパーフェクトボーイだけど、私は平凡でどこにでもいる普通の女子…より目立たない地味な存在。
そんな一人の女の子を誰が好きになるのだろう。
ああ、落ち込む…。
沈んだ気分で上杉君の隣を歩く。気づかれるかも、と思ってたけどドンピシャだった。
「またテンション落ちてるぞ。…………ま、俺のせいか。」
その言葉で上杉君と視線を合わせる。
「立花がテンション下がってるのってさ、俺のせいだろ。行きしなも俺が冷たくて落ち込んでたし、デートが楽しめてなかっただろうし。今も落ち込んでる。」
「やっぱり、俺ばっかなのな、好きなの。」
え?
「俺だけが立花のこと好きで、想っててさ。俺といても楽しくないだろ。だから、さ…………別れようぜ。」
「や、やだ…。」
「その方がお前も楽だって。」
「嫌だもん!そんなの、私だってそう。私ばっかり好きで、想ってて。でもそんなの言えなくて。悲しくなることもあるよ。でも、それよりずっと、会えた時の喜びの方が大きいから!………大きいから、付き合ってたのに。上杉君が私のことが嫌いになったなら別れるけど、そうじゃないのに別れるなんか嫌だから。」
少し涙で視界がボヤけてしまったけど、言いたいことは全部言えた。
肩で息をしていると、体を引き寄せられた。
「本当、俺ばっかりだと思ってた。じゃ、俺、立花も俺と同じくらい好きだって思ってもいいか。それとも、自惚れすぎか。」
私は、上杉君の大きな胸の中で首を振る。
「自惚れてなんかいないよ。そう思ってて。私もずっと永遠に好きだから。」
「ん、俺も。」
甘い甘い風が吹いた。私たちは、お互いの想いをのせながら、しばらくそうしていた…………。
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作者名:ぬの | 作成日時:2018年5月6日 11時