第62幕 満月の夜 ページ17
あの後、俺は雪羅さんや他の妖怪共から質問責めにあった。
それで俺は何とか誤魔化しつつ、その場から屋敷の屋根へと逃げた。
珱…、笑ってないで助けて欲しかった。
あと、頼むから…。
せめて、一人づつ喋ってくんねぇかな!?
何言ってんのかさっぱりだ!
屋根の上には誰も居ない。一人の空間。
下からは騒がしい声が聞こえる。
空を見上げると、そこには立派な満月が輝いていた。
少し冷たい風が頬を撫でる。
凛:「今日は満月か…。綺麗だな…」
ぬら:「ほぉ。確かに、こりゃ見事じゃ」
凛:「!?…っは、な…ぬ、ぬらっ!?」
一人ばかりと思っていたら、横にはぬらが酒が入った盃を片手に、俺と同じ様に空を見上げていた。
い、いつの間に…。さすが、ぬらりひょん。
全く気付かなかった。
凛:「ったく…。居たなら一言ぐらい言えよ。心臓に悪いぜ」
ぬら:「気付かなかったお前が悪りぃ」
凛:「うぐ…。そりゃあ、そーだけど…」
あれ?
俺、今ぬらと普通に話せてる。
ぬらも平然としてるし、さっきのアレはもしかして幻聴だったんじゃ………
ぬら:「さっき言った事は嘘じゃねぇぞ」
ですよね!うん!俺、ちゃんと知ってた!知ってたから、そんなに睨まないでくんね!?
かなり怖えから!
夜で暗いが、満月の光のせいか、ぬらの顔がよく見える。じっと見つめるその月光に輝く黄金の瞳が、嘘なんかではない、と俺に語っている様に思えたのは、気のせいではないだろう。
ドクッと心臓が跳ね、スッと目を逸らした。
…ダメだ。俺、ぬらの瞳、ちょっと苦手だ。
何もかも見透かされてる様で。
隠している事を全部、見られている様で。
−−−ぬらが俺に惚れているなんて、あり得ない。
俺は、この時代の人間、妖怪でも、この世界の奴でもない。存在している事自体、あり得ない。
ぬらが俺を好きと思っているのは、ただの勘違い。その好きという感情は、きっと興味や好奇心の間違いだ。
本当に好きになる奴は俺じゃない。
もう一人の奴なんだよ。
さてさて、どうやってぬらから『俺』を消そうか。
言霊でちょちょいっと、消しちまうか?
その方が楽で丁度いいな。うん。
思いたたったら即行動。
今から、ぬらの記憶の中から『俺』を消す。
それでさよならだ。ぬら。
そう決め込んだ俺は、ぬらの方へと顔を向けた。
凛:「なぁ、ぬらーーーー!?」
急にぬらに、腕を引っ張られたと思った瞬間。
目の前にぬらの顔があった。
凛:「えーーーー」
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桜(プロフ) - 続きめっちゃ気になります! (10月3日 23時) (レス) @page25 id: 1fc4502f62 (このIDを非表示/違反報告)
チカ - 続きが気になりマックス (2018年6月27日 22時) (レス) id: 7c63f912f8 (このIDを非表示/違反報告)
アニメラブ(プロフ) - 面白い!!続きが待ちきれない (2017年12月22日 22時) (レス) id: 9491c8ca0e (このIDを非表示/違反報告)
春歌 - 続きがすごく楽しみです♪ (2017年11月25日 12時) (レス) id: b5a85efb84 (このIDを非表示/違反報告)
サヒア - 皆様〉応援ありがとうございます!今更ですが、頑張ります! (2017年8月29日 15時) (レス) id: 1d3fa82ba1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:サヒア | 作成日時:2015年2月23日 15時