君を攫いたい 《ゆとそや》

走れ ページ19

蒼弥side





言われるがまま鞄を持ち

呆然としているクラスメイトを尻目に教室を出る。





｢あ、あの、どこへ行くんですか？
井上先輩…｣


瑞｢ちょっとね。
はい、携帯出して｣




｢携帯？｣


瑞｢早く。俺は3年だし、サボるわけにはいかないから急いで｣





学年関係なく、サボるのはダメだと思うんだけど！？

何この帝王みたいな人！





そう思ったけど、文句は言えなくて…
渋々携帯を出してロックを解除してから渡す。




｢どうぞ｣




瑞｢ん。えーと…、
電話番号でいっか。lineもそれで登録すればいいし｣





何やらブツブツ良いながら
手馴れたように電話番号とか、ついでにlineを登録していく。


井上先輩の連絡先かな？と思ったけど、もう1人登録してたから…誰だ？




瑞｢出来た。
はい、ありがとう｣


｢どうも…で、あとはどうすれば？｣






瑞｢〇〇大学知ってるよね？｣


｢一応知ってます｣


瑞｢よし、じゃあ行って｣




｢は！？｣




携帯出してって言ったと思ったら、次は大学行け？

本当に何なのこの人!!




そういう思いが顔に出てたのか、井上先輩は表情を少し曇らせながら



瑞｢言っとくけど、俺は頼まれただけだからね｣



と拗ねたように言った。






｢頼まれたって…、さっきの携帯だって井上先輩の連絡先は分かります。
でも、もう1人この『ヘタレ』って誰ですか？｣



瑞｢行けばわかるよ。
学校出たら、そのヘタレに電話して大学に向かって。
…いい？何があっても、絶対大学に行けよ！｣



｢何がって、なんですか!｣




瑞｢あいつはトラブルホイホイだから、一応。
ほら、早く行く！｣





あぁ、もう 何なんだ





井上先輩にお礼を言った後、文句しか出てこない口を閉じて学校を飛び出す。



廊下を歩いていた安井先生に
｢何処へ行くんだ｣ って怒られそうになったけどこの際、スルーさせてもらった。




｢電話だよね、このヘタレさんに…｣




本当に誰？

ていうか、井上先輩と優斗って知り合いだったんだ…




疑問に思いながら、とりあえず電話をかける。







何コールかしても出なくて、そろそろ切ろうかと思った頃にようやく出た









?『もしもし…？』








｢あ、もしもし
えーと、猪狩と言います。井上瑞稀さんに言われて電話したんですが…｣







?『え、猪狩って…
もしかして、そうやん？』











その呼び方は









｢…優斗？｣

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