何が正解か分からないんです。 ページ8
『…衣更先輩は、お兄ちゃんは昔からあの性格で…器用で、努力家で、優しくて、誰からも当たり障りなく好かれるような…そんな人でした。』
『私は、不器用で。お兄ちゃんみたいに誇れるものはできなかった。人並み程度。人並み以下。それが、衣更真緒の妹でした。』
『両親も、お兄ちゃんだけ。別にそれは悲しくないんです。人は誰だって輝きに目を奪われるものだから。』
吹っ切れたように話し出す嬢ちゃんは、何だか自分自身の事じゃなくて、第三者の目線からそれを語っているようじゃった。
『私は、私なんかじゃない。衣更真緒の妹。それだけが私の価値。利用され、貶され。平たく言うとそんな感じです。だからさっきのはそれの延長上。』
それだけの話なんです。憂いを含んだ表情でそれを告げる嬢ちゃんは本当に今にでも消えそうで。
『…だからっ…衣更真緒に傷をつけないように。私は耐えるだけ。衣更真緒の妹であることが私の価値。全てだから。』
「それは、『分かってますよ。でもね。私もこれが正解なのか、間違ってるのか分からないんです、でも今の私にはそれしか出来ない。』
我輩の、腕の中でそう告げた嬢ちゃんは、とても。とても。脆かった。
”衣更くんの妹。”
凛月の大事な幼なじみ。
寂しがりの凛月のそばにずっと寄り添ってくれていた優しい青年。
じゃが、凛月のそばに衣更くんがいた時、嬢ちゃんの側には誰がおったのじゃろうか。
上面だけの友達？嬢ちゃんを見ない両親？否、一人ぼっちだったのだろうか。
影に隠れる嬢ちゃんと、輝きを増していく兄。
”衣更真緒の妹。”嬢ちゃんがそれだけが大切だと気づいてしまったのはいつなんじゃろうか。
自分の意思すら持たぬ、耐えることしか知らぬ、そのように、なってしまったのは。
それを考えただけでも。腕の中で俯く少女がとても強く、脆く見えてしまった。
だから我輩は明るく言うのじゃ。
「のう、嬢ちゃん。お願いがあるのじゃ。”零先輩。”って呼んではくれぬか？」
少し驚いたように顔を上げ、目を見開いた嬢ちゃんは、きっとマスクの下の頬を赤らめて。そして言った。
『…っ…零先輩…？』
嬢ちゃん。我輩は嬢ちゃんの力になれるじゃろうか。
嬢ちゃんが、自分の価値を認められるまで。
老いぼれは見守っておることにするぞい。
愛しい嬢ちゃんよ。
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夜空 -Night Sky-(プロフ) - すごく面白いです！！続き楽しみです！...完結？ (2020年8月20日 0時) (
レス) id: 2b2a41cc61 (このIDを非表示/違反報告)
緋凰(プロフ) - みかん星人さん» はっ…！確認してみたらそうでした…！ひぇっ…、やらかしです、、ご指摘ありがとうございます！更新頻度はバラバラですが、これからもよろしくお願いします！ (2018年9月23日 23時) (レス) id: 2788ca1a51 (このIDを非表示/違反報告)
緋凰(プロフ) - 佳乃さん» 描写は自分の好きなように、綺麗に描写できるように、心がけているので嬉しいです！ありがとうございます！ (2018年9月23日 23時) (レス) id: 2788ca1a51 (このIDを非表示/違反報告)
みかん星人(プロフ) - お兄ちゃん。のとこのホッケー、サリーの間違いじゃないですか？すいません！更新楽しみにしてます！ (2018年9月23日 0時) (レス) id: 8089ca85b5 (このIDを非表示/違反報告)
佳乃(プロフ) - 真緒くんの両親が酷い・・・ただ描写が切実で切ない・・・思わず泣きそうになりました。 (2018年9月18日 22時) (レス) id: a3cd6ccc41 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：緋凰 | 作成日時：2018年7月20日 0時
