間違い。 ページ34
ぼろぼろぼろぼろ。何でだろう。
虚しいのかな。悲しいのかな。涙が、雫が、零れ落ちて止まらない。
行く宛もないのに。制服姿でさまよう自分。
こんなの。間違ってるんだ。
私はいつも通りに、家で、どこでも品行方正頑張れば、それで良かったんじゃん。
自分が耐えれば、何も怖くない。誰にも迷惑はかけない。
そういう世界だったじゃないか。私なんかが優しさを知ってしまうから。
優しさを知ってしまったらもう、戻れないじゃないか。
それに気づくのはあまりにも遅すぎて。
走りすぎて、呼吸すらもままならない。
このまま野垂れ死にできたらどんなに楽だろう。
あれから何時間私は逃げた？
泣いた？
でもこれからどうするの？分からないよ。
切ったままのスマホの電源も。
痛いと疼く自分の足も。
もう何が正解で不正解なのかわからないよ…！
｢嬢ちゃん！！！！！｣
久しぶりに届いた人の声。
その直後に包まれる人の温もり。
相手の騒がしい鼓動に、息遣い。
『さく…ま…先輩…？零先輩…？』
私を捕らえて離さない赤い瞳、振れる黒髪。
｢嬢ちゃん…良かった…みんな、もちろん薫くんも心配しておったぞ…｣
『先輩…あの…大丈夫ですか…？夕方とはいえまだ日差し…』
｢馬鹿をいえ！我輩のことよりも、我輩はっ…嬢ちゃんが心配じゃからこうしておるのじゃぞ？｣
あぁ。これが優しさ。薫先輩と同じ感覚。
温かすぎて、止まらない涙がまた零れ落ちた。
___。
ずずっ…と紙パックから残りの残量の少なさを表す音が聞こえてきた。
嬢ちゃんがお礼だといくら断っても渡してきた残り少ないトマトジュースを吸い込みながら、先程から我輩の半歩後ろを俯き歩く嬢ちゃんを尻目に眺めた。
乱れた髪、泣き腫れた目。弱々しい足取り。
すっかり息を切らしながら焦燥しきった薫くんから嬢ちゃんが衣更くん家を飛び出したらしいと連絡を受けた時は本当に焦ったものだった。
さすが薫くんと言ったものか。持つべき連絡網をすべて駆使して、たくさんの人に連絡を繋いでいたようじゃった。
薫くんにはもう嬢ちゃんを見つけたと伝えてある。
あとはきちんと、嬢ちゃんを薫くんのところに送り届けるだけなのじゃが、少し喝を入れてやろうかの。
｢なぁ、嬢ちゃん、_______________？｣
雫が零れ落ちた。
揺らめいて崩れる。
下手な笑みが咲いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 345人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「あんスタ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
夜空 -Night Sky-(プロフ) - すごく面白いです！！続き楽しみです！...完結？ (2020年8月20日 0時) (
レス) id: 2b2a41cc61 (このIDを非表示/違反報告)
緋凰(プロフ) - みかん星人さん» はっ…！確認してみたらそうでした…！ひぇっ…、やらかしです、、ご指摘ありがとうございます！更新頻度はバラバラですが、これからもよろしくお願いします！ (2018年9月23日 23時) (レス) id: 2788ca1a51 (このIDを非表示/違反報告)
緋凰(プロフ) - 佳乃さん» 描写は自分の好きなように、綺麗に描写できるように、心がけているので嬉しいです！ありがとうございます！ (2018年9月23日 23時) (レス) id: 2788ca1a51 (このIDを非表示/違反報告)
みかん星人(プロフ) - お兄ちゃん。のとこのホッケー、サリーの間違いじゃないですか？すいません！更新楽しみにしてます！ (2018年9月23日 0時) (レス) id: 8089ca85b5 (このIDを非表示/違反報告)
佳乃(プロフ) - 真緒くんの両親が酷い・・・ただ描写が切実で切ない・・・思わず泣きそうになりました。 (2018年9月18日 22時) (レス) id: a3cd6ccc41 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：緋凰 | 作成日時：2018年7月20日 0時
